電卓技術教科書
●電卓への好奇心
私は昔から、電卓というものが気になってしょうがない。中身がどうなっているのか。どういう
回路になっているのか。なぜ計算できるのか。
しかし私が小学生の頃、すでに電卓はLSI化されており、フタをあけてみてもブラックボックスで
あった。
そのうちに、パソコンに興味が出てきて、ニャロメのおもしろコンピュータ探検という本を読み
ROMというものを知った。電源を切っても記憶が消えないメモリーのこと。そうか、ROMに、
あらゆる計算の組み合わせ(1+1=2、1+2=3、1+3=4、・・・)に対する答えが入れて
あるんだと、当時思ったものだ(笑)。
ROM、つまり表だが、そこから答え、あるいは中間値を引いてくる方法もあるけど、一般的
には、「計算の<手順>が記憶してある」ということになるだろう。
リレー式電卓の記事にも書いたけど、ROMに記憶させる方法があるはずだと思った。当時、
テレビで見た電卓工場の映像で、ロボットがボタンを操作しているのを見た。そうだ、これが
計算の答えを打ち込んでいるんだと、−−−あとから思えば誤解だったが−−−、人間が
やれば大変だからロボットが1+1=2、1+2=3、1+3=4、・・・と打ち込んで記憶させてい
るんだと思った。
それならばと、手元にある電卓を、1+1=3にしてやろうと企てた。しつこく1+1=3と操作
した。100回でも1000回でもやれば、記憶が焼き付くに違いないと思った。実際には1000回
もやるほど根性が無かったが、答えが変わらないから、次に、何か隠しコマンドがあるんじゃな
いかと思った。
どれかのボタンを押しながら操作すればいいかもしれないと思った。あるいは複数のボタンを
いっぺんに押すのかも?あるボタンを押しながら電源をON/OFFするのかも?とにかく、いろ
いろ試してみた。
結局、1+1=2は変わらなかったが、おもしろい発見があった。いくつかのボタンを同時に
押すと、蛍光表示管の数字の形が変わるのである。これはボタンのスキャン信号と表示の
スキャンを同じ信号で行っているため、ボタンの同時押しで信号がショート(という表現が適切
じゃないとは思うが)のような状態になって、信号が回り込むからだ。
むかしは何も知らなかったが、電卓のLSIはマスクといって、回路やプログラムが工場で焼き
込まれているから、あとから書き換える事はできないんだな・・・。
いまでは100円で買える電卓も、じつはLSIの中にたいへんなカラクリが作り込まれている。
そんな事、ぜんぜん考えないし意識しないけど、100円で売られるようになるまでは、すごい
道のりがあった。その歴史にも興味をもった。
電子立国日本の自叙伝というNHKの番組では、電卓の開発からマイコンまでの流れが紹介
されていた。カシオのリレー式計算機が実際に動くシーンは、その10年後に私をリレー式電卓の
製作へと導く感動があった。
番組では、リレーからトランジスタ、IC、LSIへの進化、電卓戦争、価格競争、答え一発(笑)、
液晶表示、太陽電池、カード型への歴史を追っていた。とても面白かった。
いろんな思いを、リレー式電卓の記事に書いてしまったのでこれ以上書くこともないが、とにかく
電卓というものが気になってしょうがなかったのだ。
●「電卓技術教科書」
これが今回の話のメインなのだが、どこで知ったのか忘れたけれど、むかし「電卓技術教科書」
という本があったようだ。ラジオ技術社から出版されていた。
むかし(30年ぐらい前)は、テレビの修理とか、アンプの作り方とか、トランジスタラジオの入門とか、
テレビの回路設計(エーッ!)なんていう本まであったようだ。いまでは、本屋の技術書の棚はすっかり
パソコンの本だらけになってしまっているが・・・私は、むかしの本にたいへん興味がある。なぜなら、
いまではブラックボックスになっているような部分が、細かく書いてあるからだ。
いくつか探し回っている本があるのだが、そのうちのひとつが「電卓技術教科書」だった。時々、
検索をかけてみていたのだが、なかなか、入手に結びつくような結果が得られなかった。
ところが先日、あれこれたどっているうちに、日本の古本屋というページに着いた。ここで、加盟
店の在庫が検索できるようだ。さっそく、電卓技術教科書と入力したら、おおっ、在庫アリ!
しかも基礎編と研究編が揃っていた!!迷わず注文しました。
そうして、今日届いたのがこれです。ちょっとカビくさくなっていました。
う〜ん、シブイ!この表紙!!
この題名の書体がいいんだ・・・「ラジオ技術」とか「ラジオの製作」とか、あのロゴと同じじゃない
かな。
本の大きさはB6判です。
左が研究編(下巻)、右が基礎編です。基礎編がたぶん「上巻」なんだろうけど、そうは書いていな
い。下巻を出すことは当初、予定していなかったのかな??わかりません。
・電卓技術教科書(基礎編) ラジオ技術全書 第021巻
昭和47年9月20日 3版1刷発行
定価(当時)¥1,300
著者代表 佐々木正
株式会社 ラジオ技術社
・電卓技術教科書(研究編) ラジオ技術全書 第028巻
昭和48年3月10日 初版1刷発行
定価(当時)¥1,500
著者代表 佐々木正
株式会社 ラジオ技術社
「研究編」の途中に、この本の案内チラシのようなものがはさまっていました。それには、このように
書かれていました。
「私達は2x3=などと、気軽にキーを押して電卓に計算させますが、2のキーを押したとき、xのキーを
押したとき、電卓の内部ではどのようなことが起こっているのでしょうか?またこの計算を行なわせる
ために、電卓の中味はどうなっていなければならないでしょうか。
ディジタル技術の粋が結集された1台の電卓を徹底的に分解して、時々刻々の情報の動きを克明に
追った本書は、まさに推理小説を読むような面白さがあります。」 (下線部は傍点)
まさに私が思っているような事が書いてあります。なんとも嬉しい限りです。
では、内容を紹介していきます。著作物なので、完全に読める形で掲載するのは問題があるでしょう
から、縮小画像で勘弁していただき、雰囲気だけでもお伝えできればと思います。
これは表示回路のページで、ユニークな蛍光表示管の写真が載っています。シャープのCS−12D
で使われているようですが、ニキシー管でもない、7セグでもない、ユニークな書体です。どちらかと
いうと手書きの数字に近い雰囲気です。9つのセグメントで1桁の数字が構成されています。
その文字は左のページの下に出ていますが、見えますでしょうか。
これは2進化10進法の減算と−6補正のカラクリが書いてあるページです。おそろしいほど細かく
丁寧に解説されています。ここまで気合いの入った本は最近見た事がありません。
これは乗算のフローチャートで、やはり細かく説明されています。1ステップごとのレジスタの
値の変化が右側のページに書いてあります。こんなに、キレイに丁寧に書いてあるのはスゴイで
す。これを読んでわからなかったら豆腐のカドに頭をぶつけなければならないかもしれません(笑)。
これは折り込みのページの一部(スキャナに入りきれなかった)で、なんと、コンペットCS−12D
の全回路図です。製品の回路図をドドーンと公開するなんて、シャープさんは太っ腹です。
回路図といっても、ゲートレベルのブロック図に近いものですが、動作を理解するにはじゅうぶんで
しょう。
裏面には、この回路図で、「電源スイッチをONにしたときに働く回路」と、「N0番地で×キーを押した
ときの選択ブランチ」が、それぞれ色刷りでわかりやすく描いてあります。
おそれいってしまいました。m(__)m
最後に、この本の目次を示しますが、目次を見ると、この本が、幅広い領域をカバーしているのがわか
ります。論理回路の基礎知識から、信頼性、製造検査、サービスまで書いてあります。まさに当時の
電卓関係者のバイブルと言えるかもしれません。
目次だけでも結構味わいがあります。
たとえば、この本が出版された当時の技術的な状況はどうなっていたのか。コアメモリに関する記述
があります。かと思えば、液晶や電池動作のことも書いてあります。
液晶については、すでに、カラー液晶に関する記述があります(研究編P.156、「分子がらせん構造を
していて電場により光の選択反射あるいは透過を生じ、カラー画像の表示が・・・」とあります)。
私が小学生の頃は、任天堂のゲーム&ウォッチなど液晶ゲーム機が流行しましたが、一部、「カラー」
だと言っていた機種があったと思います。じつは液晶がカラーではなくて、上にかぶせてあるシートに色が
ついていてカラーに見えるだけでした。インベーダーやブロック崩しの白黒テレビに色セロハンが貼ってあっ
たのと同じです。
研究編の134ページには、4相基本回路が載っています。NHK「電子立国日本の自叙伝」で、当時の
シャープの方がアメリカのロックウェルにLSIを作ってもらいにいったときの話がありましたが、日本から
持っていった回路図は全部否定されて、あちらでは4相の回路という新しいやり方だった。それがこの
回路なんですね。
これからじっくり読んで、感想などを追記していきたいと思います。
注意!!
本の販売、貸し出し、コピーサービス、内容に対する問い合わせの対応などは行いませんので、ご了承
ください。
※※※ 参考資料として、目次を以下に示します。 ※※※
●目次 (基礎編)
見返し (表)プログラム・チャートと各F/Fの役割り
見返し (裏)加減算・乗除算のフロー・チャート
緒言 監修者のことば
序章 電卓の歴史と将来の展望
1.計算機の歴史
2.電卓の歴史
3.電子式卓上計算機の定義と分類
4.将来の展望
第1章 電卓とは
1・1 電卓の操作法
1・1・1 キー・ボードと操作の基本
(1)置数キー
(2)ファンクション・キー
(3)定数指定スイッチ
(4)タブレッション・ダイヤル・スイッチ
1・1・2 CS−12Dによる計算の実例
1・2 電卓のなかでの計算の仕組み
1・2・1 加算のメカニズム
1・2・2 減算のメカニズム
1・2・3 小数点のある場合と、答がマイナスになる場合のメカニズム
1・2・4 計算機の三つの柱
1・2・5 制御装置
(1)「何処で」
(2)「何時」
(3)「何が」「何によって」「何を行う」
(4)制御装置のはたらき
第2章 電卓の基礎理論
2・1 2進法
2・1・1 単純な2進法
2・1・2 p進法の変換
2・1・3 2進化10進法(8−4−2−1コード)
2・1・4 2進化10進数の加減算
(1)加算の場合
(2)減算の場合
2・1・5 2進法と論理回路の関係
(1)論理和回路
(2)論理積回路
(3)否定回路
(4)論理記号
2・2 論理数学の基礎
2・2・1 ブール代数の概念
2・2・2 Venn図表によるAND、ORの表現
2・2・3 ブール代数の定理
2・2・4 Venn図表の価値
2・2・5 Veitch図表
(1)要素が一つの場合のVeitch図表
(2)要素が二つの場合のVeitch図表
(3)要素が三つの場合のVeitch図表
(4)要素が四つの場合のVeitch図表
2・2・6 真理値表から論理式の導き方
(1)真理値表から論理方程式の導き方
(2)論理方程式の簡単化
(3)冗長(組合わせ禁止)
(4)2進化10進法の組合わせ禁止項
2・3 論理素子
2・3・1 ダイオード
2・3・2 トランジスタ
(1)トランジスタの接地方式
(2)トランジスタの静特性曲線
(3)トランジスタの電流増幅率βと電流伝送率α
(4)コレクタ遮断電流(Ico)
(5)トランジスタの耐圧(最大コレクタ電圧Vcbo)
2・3・3 MOS形電界効果形トランジスタ(MOS FET)
(1)MOS形FETの動作原理
(2)MOS形FETの分類
(3)MOS形FETの特徴
(4)MOS形FETの基本回路
2・3・4 コア記憶素子
(1)フェライト・コアの磁気的特性
(2)電流一致方式
2・4 パルス回路
2・4・1 パルスとは
2・4・2 パルスの変形
2・4・3 微分回路、積分回路
(1)CR微分回路
(2)CR積分回路
2・4・4 トランジスタのスイッチング回路
(1)スイッチング回路
(2)トランジスタのスイッチング特性と回路動作
(3)トランジスタのパルス応答
2・4・5 いろいろなパルス回路
(1)インバータ・パルス増幅回路
(2)エミッタ・フォロワ・パルス増幅回路
(3)表示用駆動回路
(4)無安定マルチバイブレータ回路
(5)2安定マルチバイブレータ回路
2・5 論理回路
2・5・1 論理和回路
2・5・2 論理積回路
2・5・3 否定回路
(1)トランジスタによるインバータ
(2)MOS ICによるインバータ
2・5・4 排他的論理和回路
2・5・5 NAND回路
2・5・6 NOR回路
2・5・7 MOS ICによる応用ゲート回路
(1)MOS ORゲート
(2)MOS ANDゲート
(3)2AND−2ORゲート
2・6 フリップフロップ
2・6・1 電卓のなかのフリップフロップ
2・6・2 一時記憶回路
2・6・3 RSS形フリップフロップ
2・6・4 J−K形フリップフロップ
2・6・5 D形フリップフロップ
2・7 集積回路(IC)と電卓
2・7・1 個別電子部品と電卓
2・7・2 ICの分類
2・7・3 MOS IC(Metal Oxide Semiconductor IC)
2・7・4 電卓に用いられているIC
(1)μPD1(5インバータ)
(2)HD−704M(Dual 4AND Gate)
(3)HD−706M(Dual 2AND−2OR Gate)
(4)HD−708M(Multi Function)
(5)HD−709M(Dual 8 Bits Shift Register)
(6)HD−713M(4 Flipflop)
第3章 電卓の実際
3・1 電卓内部の各装置の関連と動作
3・1・1 電源スイッチを入れるとどうなるか
(1)パルス・ジェネレータとその動作
(2)ビット・タイム・カウンタ
(3)ディジット・タイム・カウンタ
3・1・2 キーを押すと、どのようにして計算が行なわれるのか
(1)数字キーを押すと、どのようにして計算機にはいるのか
(2)ファンクション・キーを押すと、どのようにして計算命令が記憶されるか
(3)スタート・パルスはどのようにして発生するか
(4)どのような装置が働いて計算を行なうのか
第4章 入・出力装置
4・1 入力装置
4・1・1 キー・ボード
(1)リード・スイッチ
(2)二重打ち防止装置
(3)タブレッション・ダイヤル・スイッチ
(4)定数指定スイッチ(N、×、÷スイッチ)
4・2 表示回路
4・2・1 蛍光表示管の構造と動作
4・2・2 表示管の駆動方法
4・2・3 小数点の表示
4・2・4 デコード回路
4・2・5 プレート・セグメント選択回路とドライブ回路
4・2・6 冷陰極放電管表示用駆動回路
第5章 演算装置と演算制御
5・1 加減算装置
5・1・1 純2進数の加減算装置はどのように構成するか
(1)純2進数による13+22=35の筆算
(2)純2進数による8−6=2の筆算
(3)純2進数の加減算装置
5・1・2 2進化10進数の加減算装置はどのように構成するか
(1)2進化10進法の加算と+6補正
(2)2進化10進法の減算と−6補正
(3)2進化10進法の加減算装置
5・2 演算手順
5・2・1 流れ図(フロー・チャート)
5・2・2 加減算フロー・チャート
5・2・3 乗算フロー・チャート
5・2・4 除算フロー・チャート
5・3 電卓の制御方式
5・3・1 プログラム・チャート
5・3・2 プログラム・マトリックス
5・3・3 マイクロ(マクロ)オーダの仕事
5・3・4 番地およびブランチ
(1)N0番地での動作
(2)N0番地からN1〜N4番地への移動
5・3・5 制御クロック・パルス
第6章 演算方式
6・1 演算実行の過程
6・1・1 Pサイクル(キー操作のない区間)の動作
6・1・2 [C]クリア・キーを押したときの動作
6・1・3 [CE]クリア・エントリ・キーを押したときの動作
6・1・4 リード・イン
(1)[C]を押してから置数した場合の動作
(2)[x]キーを押したときの動作
(3)[÷]キーを押したときの動作
(4)[=]キーを押したときの動作
(5)[-]キーを押したときの動作
6・2 演算の実例
6・2・1 加減算の実例
(1)54.6−60.05=5.45(TAB=2)
(2)ルーチンk−15の内容
(3)ルーチンk−16の内容
(4)ルーチンk−17の内容
6・2・2 乗算の実例
(1)2.5×7.2=18.00(TAB=2)、Nモード
(2)ルーチンk−18の内容
(3)ルーチンk−19の内容
(4)ルーチンk−20、21の内容
(5)ルーチンk−22の内容
(6)ルーチンk−23の内容
(7)ルーチンk−28の内容
(8)ルーチンk−29の内容
6・2・3 除算の実例
(1)725.1÷3.925=184.738(TAB=3)Nモード
(2)乗算と除算のルーチンの相違点
(3)ルーチンk−24の内容
(4)ルーチンk−25の内容
(5)ルーチンk−26の内容
(6)ルーチンk−27の内容
6・2・4 定数計算
(1)ルーチンk−3の内容
(2)ルーチンk−9の内容
6・3 メモリー機能とその動作
6・3・1 メモリーとは
(1)メモリー付き計算機の相異点
(2)B F/Fの追加
6・3・2 Mに関する各ブランチの動作
(1)Pサイクル、ルーチンk−1の内容
(2)[CM] ルーチンk−18の内容
6・3・3 メモリー計算の実例
(1)メモリー加減算の実例
(2)メモリー乗算の実例
(3)メモリー除算の実例
(4)ルーチンk−19の内容
(5)ルーチンk−19、20、21の内容
(6)ルーチンk−19、20、22の内容
(7)[M+]と[M-]の差
(8)ルーチンk−28の内容
(9)ルーチンk−29の内容
(10)ルーチンk−32、26の内容
第7章 電源回路
7・1 整流回路
7・1・1 整流
7・1・2 整流回路と負荷の関係
(1)半波整流回路
(2)全波整流回路
7・2 定電圧回路
7・2・1 定電圧回路(ツェナ・ダイオード)
(1)定電圧特性
(2)基本的な定電圧回路
(3)ツェナ・ダイオードによる定電圧回路
7・2・2 トランジスタを用いた定電圧回路
(1)並列形定電圧回路
(2)直列形定電圧回路
7・2・3 定電圧回路の実用回路
第8章 電卓の操作法
8・1 電卓の取扱い法
8・2 シャープ電卓による計算例
〔1〕コンペットCS−201による計算例
〔2〕コンペットCS−362による計算例
〔3〕コンペットCS−361Pによる計算例
<索引>
折込み1.コンペットCS−12Dの全回路図
2.わが国の電卓の一覧表
●目次 (研究編)
見返し(表) シャープ製品に見る電卓の発達史
見返し(裏) キー・オペレーション・フロー・チャートの実例
緒言 監修者のことば
第1章 電卓の高級化
1・1 印字式(プリント式)電卓
1・1・1 印字式電卓のプリント・フォーム
(1)加減算
(2)乗算
(3)除算
(4)負数のある乗除算
(5)積和、積差と個々の積
(6)和積、差積
(7)定数計算
(8)べき計算
1・1・2 印字式電卓のフロー・チャート
(1)乗算A[×]B[=]のフロー・チャート
(2)除算A[÷]B[=]のフロー・チャート
(3)加減算A[=]B[−]のフロー・チャート
1・2 シャープCS−661印字式電卓
1・2・1 操作キー
1・2・2 プリンタの仕様
(1)各種演算のプリント・フォーム
(2)ゼロ・サプレス機能
(3)パンクチュエーション
(4)オートマチック・スペース
1・2・3 ライン・プリンタの印字メカニズム
(1)活字の配列
(2)ハンマーのメカニズム
(3)位置検出機構
(4)プリント開始命令
(5)プリント・サイクルとPの関係
(6)ゼロ・サプレス信号および一致検出信号記憶用レジスタ
(7)ゼロ・サプレスの方法
(8)一致検出の方法
1・3 シャープCS−361R
1・3・1 3レジスタ方式とは
(1)乗算方法
(2)除算方法
1・3・2 完全自動処理小数点方式とは
1・3・3 数式どおりの連続乗除算について
1・3・4 ROUND(切上げ、四捨五入、切捨て)
1・3・5 ゼロ・サプレス
1・3・6 パンクチュエーション
1・3・7 フロート
1・3・8 開平計算
(1)電卓の開平計算の原理
(2)開平計算のフロー・チャート
1・4 プログラム付電卓CS−361P
1・4・1 プログラム付電卓とは
1・4・2 プログラム部の構成
1・4・3 プログラム部動作の概略
(1)情報記憶装置
(a)書き込み、読出し方法
(b)磁気コアの選択方法
(2)アドレス・ステップ・カウンタ
(a)アドレス・ステップ・カウンタT(ASC−T)
(b)アドレス・ステップ・カウンタU(ASC−U)
(3)LP発生回路
(4)RP発生回路
(5)コードの自動書込み
(a)キー信号
(b)命令
(c)AUXコード
(d)Haltコード
(6)プログラムの実行
(7)CL☆(クリア・スター)信号
1・4・4 プログラムの組み方
(1)キーおよびスイッチ
(2)プログラムの基本的パターン
1・4・5 計算式の書込み読出しの実際
(1)Lモード(計算式の書込み)
(2)Aモード(計算式の読出し実行)
第2章 新しい電卓
2・1 設計の立場から見た電卓
2・1・1 IC化電卓設計技術の推移
(1)回路設計の推移
(2)論理設計の推移
(3)システム設計の推移
2・2 新しい電卓を支える技術
2・2・1 電卓の機能と信頼性の進展
2・2・2 MSI化、LSI化と回路設計技術
2・3 新しい電卓の機能
2・3・1 電卓の機能上の分類
(1)超小形低級機(電子ソロバン)
(2)普及機、中級機
(3)高級機(プログラム機および科学計算用電卓)
2・3・2 電卓の仕様設計
(1)状態図による方法
(2)オペレーション・フロー・チャートによる方法
2・3・3 各社製品の特徴比較
2・4 電卓技術と設計
2・4・1 電卓設計の基本的な考え方
2・4・2 IC化、LSI化に伴う論理、回路方式の推移
(1)IC化
(2)MSI化
(3)LSI化
2・4・3 制御方式一般
2・4・4 周辺部品との関係
(1)キー
(2)表示部
2・5 論理回路方式
2・5・1 IC回路方式
(1)DCTL
(2)RTL
(3)DTL
(4)TTL
(5)CML
(6)CTL
(7)MOS IC
(a)MOS ICの特徴
(b)レシオ回路、レシオレス回路
2・5・2 4相論理回路
2・5・3 特徴あるIC回路
(1)C−MOS(Complementary MOS)
(2)ブートストラップ回路
(3)マルチフェーズ・インターフェース回路
(4)Bi−MOS
2・5・4 各種MSI
(1)固定LSIと汎用LSI
(2)プログラミングとROM、RAM
(3)ROM、RAMとPLA
2・5・5 LSI化のシステムと回路構成
2・6 電卓の周辺装置と部品
2・6・1 表示および駆動回路
(1)多桁数字表示管
(a)多桁数字表示放電管
(b)多桁蛍光数字表示管
(2)発光ダイオード・ディスプレー
(a)LEDの発光現象
(b)結晶材料
(c)LEDの特徴と電卓への応用
(d)LEDに適した数字表示駆動回路
(3)液晶ディスプレー
(a)液晶ディスプレーの特徴
(b)液晶の動作原理
(c)液晶ディスプレーの構造
(d)液晶ディスプレーの電気的特性
(e)液晶ディスプレーに適した駆動回路
(4)ブラウン管(CRT)
(a)CRTの特徴
(b)CRTの駆動回路
(5)その他の新しいディスプレー
2・6・2 プリンタおよびその駆動方式
(1)電卓に適した印字機構とは
(2)機械式プリンタ
(a)フライング・ドラム式プリンタとその駆動回路
(b)マルチ・タイプ・ホイール式プリンタの駆動制御回路
(c)タイプ・バー式
(3)電子式プリンタ
(a)電解式プリンタ
(b)インク・ジェット方式
(c)放電破壊式プリンタ
(d)駆動回路
2・6・3 電卓用電池電源
(1)ポータブル電卓用電池
(a)各種電池の評価
(b)電池駆動形電卓の設計ポイント
(c)ユーザーへの注意事項
(2)電池とDC−DCコンバータ
2・7 電子ソロバンEL−8
2・7・1 EL−8の概略
2・7・2 EL−8の構成の特色
2・7・3 演算部
(1)基本回路@の場合
(2)基本回路Aの場合
(3)基本回路B、Cの場合
2・7・4 表示部
2・7・5 入力部
2・7・6 バッテリ
2・7・7 電圧変換部
2・7・8 ACアダプタ、カー・アダプタ
2・8 事務計算用電卓の設計例
2・8・1 高級事務用電卓CS−363Rの設計
(1)CS−363Rのシステム構成
(a)入力装置
(b)演算装置
(c)出力装置
2・8・2 中級事務計算用電卓CS−222の設計
2・9 科学技術用電卓
2・9・1 科学技術用電卓の背景
2・9・2 科学技術用電卓の機能
(1)指数処理方式
(2)プログラム機能
(a)相対アドレス方式
(b)絶対アドレス方式
(c)その他の命令
(3)関数機能
(4)多メモリ
(5)プログラム・ローダ
(6)高速演算機能
(7)多様な周辺装置の利用
2・9・3 科学技術用電卓CS−363Pのシステム構成
(1)構成の概要
(2)基本演算制御
(3)超越関数の計算
(4)ROMによる超越関数のプログラム
(5)プログラム機能
2・9・4 科学技術用電卓の周辺装置
(1)ディスプレー
(2)キー・ボード
(3)各種オプション・デバイス
2・9・5 科学技術用電卓の今後の方向
第3章 集積回路
3・1 はじめに
3・2 小形化とIC
3・2・1 小形化の法則
3・2・2 小形化する方法
3・2・3 小形化の歩留まり
3・3 集積化
3・3・1 アイソレーション
(1)空間的に分離する方法
(2)絶縁体層による分離
(3)PNジャンクションによる分離
3・3・2 配線
3・3・3 集積化と歩留まり
3・4 ICの分類
3・5 バイポーラIC
3・5・1 バイポーラICの各種素子
(1)トランジスタ
(2)ダイオード
(3)抵抗
(4)容量
3・5・2 バイポーラICの設計の問題点および製造工程
(1)絶縁領域の決定
(2)回路の交差
(3)素子の占有面積とコスト
(4)バイポーラICの製造工程
3・6 MOS IC
3・6・1 MOS ICの特徴
3・6・2 MOSトランジスタの構造と動作
3・6・3 MOS抵抗とMOSコンデンサ
3・6・4 MOS ICにおけるディジタルの基本回路とパターン
3・6・5 MOS表面の安定化
(1)不安定の原因
(2)安定化の方法
3・6・6 各種の新しいMOS
(1)MOSトランジスタのスイッチング高速化
(2)シリコン・ゲートMOS
(3)C−MOS(コンプリメンタリMOS)
3・7 LSI(大規模集積回路)
3・7・1 LSIの定義と特徴
3・7・2 LSIの設計
3・7・3 LSIの分類
(1)形態による分類
(2)配線方式による分類
(a)任意配線方式(Discretionary Wiring)
(b)100%歩留まり方式(100% Yield Approach)
(c)積木方式(Building Block)
3・7・4 電卓とLSI
第4章 電卓の製品設計
4・1 電卓設計の手順
4・1・1 電卓設計の基本構想
4・1・2 電卓の基本設計
4・1・3 PCB(Printed Circuit Board:プリント基板)設計
4・1・4 動作確認および諸測定
4・1・5 デザイン
4・1・6 機構設計
4・1・7 試作機
4・1・8 試作機試験
4・1・9 総合評価
4・2 設計上の諸問題
4・2・1 設計基準の必要性
4・2・2 電気的特性のマージン・チェック
(1)論理回路用電源電圧マージン・チェック
(2)周波数マージン・チェック
(3)各部信号波形チェック
4・2・3 環境マージン・チェック
(1)温度マージン・チェック
(2)湿度マージン
(3)対静電気マージン
(4)ノイズ・マージン
(5)不要輻射電波(Radio Frequency Interference)
4・3 部品および電卓の試作と評価
4・3・1 部品の試作と評価
(1)部品の規格(Specification:スペック)
(a)性能スペック条件
(b)信頼性スペック条件
(2)部品の試作
(3)部品の認定
4・3・2 電卓の試作と評価
(1)電卓の試作
(2)電卓の評価
(a)信号レベルの試験
(b)トランスの試験
(c)セット内温度上昇試験
(d)電力の測定
(e)フェーズ値決定試験
(f)瞬時停電試験
(g)ノイズの試験
(h)静電気の試験
(i)通電エージング・テスト
第5章 電卓の安全規格
5・1 安全規格の概要
5・1・1 安全規格の目的
5・1・2 各国の安全規格
5・1・3 CEE規格とその他の安全規格の関係
(1)CEE規格
(2)CEE規格とヨーロッパ安全規格
(3)CEE規格とUL、CSA電気用品規格
(a)感電防止
(b)火災防止
5・2 電卓の安全規格と対策
5・2・1 安全規格用語とその注意
(1)活電部分
(2)近づきやすい部分
(3)間隔
(4)絶縁
(5)機器分類
(6)正常動作状態
(7)障害状態
(8)エンクロージャ
(9)電源コード
(10)ストレーン・リリーフ
(11)配線
(12)接地
(13)絶縁抵抗、耐圧
(14)表示
5・2・2 安全規格を考慮した機構設計
第6章 電卓の信頼性
6・1 信頼性計画
6・2 信頼性試験
6・3 信頼度の予測と評価
6・3・1 製品のMTBF予測、算出方法
(1)部品の故障率データによる予測手順
(2)試験による算出手順
(3)市場データによる算出手順
6・3・2 MTBFの評価
6・4 電卓の信頼度設計
6・4・1 配線の信頼性
(1)プリント基板配線
(2)スルー・ホール
(3)プリンシャ・コネクタ接触端子
6・4・2 部品の信頼性
(1)ダイオード、トランジスタの信頼性
(2)IC、LSIの信頼性
(3)ディスプレー装置
6・4・3 機構の信頼性
(1)部品、材質強度
(2)放熱性
(3)組立性
6・4・4 回路の信頼性
(1)ディレーティング
(2)温度マージン
(3)部品の標準化
第7章 電卓の製造・検査工程
7・1 電卓の製造工程
7・1・1 プリント基板上の組立て
7・1・2 ハンダ付け
(1)ハンダ付けとは
(2)フラックス
(3)洗浄
(4)防湿処理
7・1・3 電卓の組立て
7・1・4 最終仕上げ
7・2 電卓の検査工程
7・2・1 検査の目的
(1)部品受入検査
(2)工程内検査
7・2・2 部品検査
7・2・3 工程内検査
(1)プリント回路の低温エージング検査
(2)プリント回路の高温パワー・エージング検査
7・2・4 完成品のエージング検査
7・2・5 検査機
(1)検査の自動化
(2)LSIテスター
(3)プリント回路検査機
第8章 ユーザーとの諸問題
8・1 サービス準備活動
8・1・1 設計部門よりサービス部門への業務移管
8・1・2 サービス資料
8・2 電卓の不良
8・2・1 故障のいろいろと対策
8・2・2 市場データのフィードバック
8・3 サービス体制
8・3・1 責任分担
8・3・2 LSI機と保守契約
索引
〔脚注〕
倍長演算
小数点方式
4捨5入昨日
アイテム・カウンタ
パンクチュエーション
バッファ・レジスタと演算速度
ROMとPLAの実際
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