池島炭鉱訪問記


■はじめに

 私は、長崎に生まれ育ったのに、今まで地元の炭鉱の事を全く
知りませんでした。
 それで、これまで崎戸、端島(軍艦島)を見に行きまして、今回は
池島を見に行こうと思ったわけです。しかも炭鉱の中まで入ることが
できるのは池島しかありません。

 池島を紹介したサイトは立派なものがいくつもありますから、これ以上の
情報を知りたければ、それらを見た方が便利です。一番良いのは、自分で
実際に行ってみることと思います。

 ここでは、見たり聞いたり感じたり考えたりしたことを自分なりにまとめて
みます。何らかの参考になりましたら幸いです。

●池島について

 現在は長崎市に属し、住所は長崎市池島町です。
 炭鉱で栄えていた頃は人口数千人だったようですが、現在は・・・

(写真5)外海地区の人口と世帯数


 ※2008年3月29日
  神浦のふるさと交流センター内にて撮影しました。
  (行政センター窓口のところです)

 かつては、対岸の町よりも都会だったそうです。スナック等の飲食店も
たくさんあったし、ボーリング場や商店も建ち並んでいたそうです。

●炭鉱見学

 2008年3月29日に参加しました。

 今回は「池島炭鉱さるく」として開催されているツアーに参加しました。
下記リンク先でコースを選び、参加希望日/性別/年齢/靴のサイズを書いて
夜にFAX送信しておいたら、翌朝に折り返しTELがありました。

 あらかじめ相談、予約すれば個人でも見学可能のようですが、念のため
ご確認下さい。土日をメインに開催しているようです。

 下記で情報を見てください。
  三井松島リソーシス株式会社 池島体験プログラム


 ネタバレ注意?
 (でも、これを読むのと実際に体験するのとでは全然違うと思いますよ。
  予習程度に読んでください。)


■大村から集合場所へ

 私は大村市在住ですから、まず大村から長崎駅への移動が必要でした。

 私の近所のバス停からだと、集合時間に間に合うバスがありませんので
早起きして、長崎空港まで35分ほど歩いて行きました。空港発ならば、9時台で
間に合うバスが有りました。

 空港から高速バスに乗って長崎駅前(県営バスターミナル)で降りました。
そこから、とりあえず歩道橋を渡り、長崎駅前に行きました。

 さて、バス乗り場がわからない。予約の電話をした時、集合場所を細かく聞こう
としたけれど、あまり細かく言われなくて、わからなかったら駅で聞いてくださいと
だけ言われました。
 言われたのは、「大村競艇への直行バス乗り場」、「10:15にはバスが待って
いるはず」、この2点のみです。

 結果から言うと、たぶんこっちだろうと歩いていったらそれで正しかったです。

 集合場所は、NHK長崎と道路を隔てて向かい側にある場所でした。確かに、
大村競艇直行バス乗り場と書いてあります。その隣は、自衛隊の長崎地方
協力本部、長崎募集案内所です。
 長崎駅の改札から出てくるとしたら、左手の方に進み、交番の前を過ぎ、左折して
ガソリンスタンドを過ぎた場所です。その道ばたにバスが停まっていました。
ここまで書けば、まず間違いなくわかるでしょう。

 いままで、何度も通りがかった場所でした。ただ、用事がなかった、意識することが
なかったから、わからなかっただけですね。ああ、なんだ、ここだったか、って感じです。

 すでにバスが待っていました。しかし、池島炭鉱さるくのバスだとは、目立ってわかる
ようには書いてありませんでした。バスの正面に回って見ると、よくある観光貸切
バスの、「〜〜〜様ご一行様」のパネルに、「池島炭鉱さるく」と地味に書いて
ありました。

 運転士と係員の2名がバスのそばに立っていて、そこで名前を告げて支払いをします。
すると、予め用意された封筒入りの(個人名が書いてある)領収書と座席番号の紙を
くれます。座席番号の紙といっても、自動で出てくる整理券ふうじゃなくて、付箋紙に
ボールペンで書いただけです。

 料金は¥4,980で、お札での支払いが多いでしょうから(おつり¥20)、
係員は小銭ケースに10円玉を入れて用意していました。なお、この金額には、
すべて(貸切バス、フェリー、弁当、見学費用)含んでいますので、特にこれ以外の
出費はありません。

 係員は出発時だけ挨拶をして、すぐ降りて見送りをしました。

 今回の参加者は17名、ほとんど年配の方ばかりでした。独特の匂いがしました。

 私は11番、通路側の席でした。隣の窓側の席は空いていましたから、窓側に移動
しました。


■集合場所から神浦港まで

 かわいいガイドさんどころか、メイドさんも居ません(笑)。とにかく神浦港まで、
ひたすら走るだけでした。

 神浦(こうのうら)港が近づいてくると、海側に池島が見えてきます。最初は、
生い茂った木などに隠れて、見えたり見えなかったりしますが、近づくにつれて
遮るものがなくなり、よく見えるようになってきます。

●神浦港

 もし自動車で来る場合、赤い橋(新神浦橋)が目印になると思います。
長崎市方面から来るとしたら、赤い橋を渡ってすぐの場所です。
 ふるさと交流センターの建物のところから曲がって、港に入っていきます。
その建物は、道路からレストランの文字が見えています。

 フェリー乗り場の前で、乗ってきた貸切バスを降りました。バスのまま乗船する
わけではありません。

 フェリーの切符は、三井松島リソーシス(以下、会社という)の係員が、団体扱いで
まとめて買ってくれました。一般料金は、大人1名¥400です。15名以上で団体料金に
なるようですが、それがいくらなのかわかりません。

 出発までの間、みんな「外海町漁協直売店」にて、いけすの魚を見たり、買い物を
して過ごしていました。

 私は、なまぐさいのが苦手なので、ちょっとだけ見てから港でボケーとしていました。
それとトイレに行ったり、人口数の写真(写真5)を撮りました。


■神浦港から池島まで

 私は港でボケーとしていましたが、出発時刻になっても、特に何も言われなくて、
なんか雰囲気で感じて、みんながフェリーに向かって歩いていくので、ああ、出発かと
いう具合でした。けっこういい加減です。

 船は、西海沿岸商船のフェリーさいかいです。

 写真1で言うと、左側の接岸している部分が船の正面です。そこが開いて、自動車と
人間が乗り降りします。

(写真1)フェリーさいかい


 そんなに大きい船ではなく、自動車は5〜6台ぐらいしか載らないように
見えました。

 桟橋で、会社の係員が集合人数を確認し、「切符を配ります」と言って
往復分をちぎって配り始めました。私が一番にもらって、船に向かい始めた
途端に、船の係員が会社の係員に何か言って(どうせ集めるからとか何とか)、
一旦もらった切符を戻して、そのまま乗り込む事になりました。ちょっと、
段取りが悪いように思いました。

 乗船後、3Fの客室に行くには、階段を2回のぼらなければなりません。その
階段はかなり急なもので、お年寄りを見ていると、きつそうでした。

 およそ30分ほどで池島に到着しました。対岸からも、池島はわりと大きく
見えていて、そんなに距離は無いように思えましたが、意外に時間がかかり
ました。(距離は7kmぐらいです。)

 特に出発するというアナウンスも汽笛も無く、いきなり動き始めました。

 私は客室の座席に座りました。「行き」は池島の撮影が難しいので、外に
出なかったわけです。何で難しいかというと、デッキからはフェリーの後ろ側しか
見えないためです。前は、操舵室でいっぱいいっぱいです。身体を乗り出せば
見えるかもしれませんけど。

 客室にはテレビがあったけど、ザザーッ、ジラジラ、という具合でした。 


■池島

 フェリーは、港内をグル〜〜〜ッと回って着岸します。

 この港は、軍艦島がおさまるぐらいの広さがあり、5000tの石炭輸送船も
かつては入港していたそうです。

(写真6)港内を旋回中に撮影


 この眺めは、何となく軍艦島に似ています。やはり炭鉱には違いありませんし、
設備とか、古いコンクリートの感じで、そう見えるのでしょう。

●大歓迎

 会社の係員数名と、赤いジャンパーを着たおばちゃん(3人ぐらい)が出迎えて
くれました。「いらっしゃいませー」と。

 港に待機していたマイクロバスに乗り込み、池島開発センターへと向かいました。
 その時に、帰りのフェリーの切符を各々渡されました。

●昼食

 最初に、池島開発センターで昼食をとりました。

 有名な?「炭鉱弁当」というもので、アルミの弁当箱に梅干しご飯、エビ天、卵焼き、
鶏唐揚げ、ぜんまいの煮物、スパゲティ、肉団子2個串刺し、が入っていました。
それから、500mlペットボトルのお茶、お手拭き、割り箸が付属していました。

 昼食をとりながら、さっきのおばちゃんが、12:50から2階で池島音頭を披露しま
すので、よろしかったらご覧下さいと言っていました。
 よろしかったら、とは言われましたが、結局みんな行きました。

●昼食後のイベント

 1.池島音頭 (おばちゃん4人、うち2名はインドネシア人)
 2.インドネシアの踊り (インドネシア人、1人)
 3.炭鉱節の説明及び炭鉱節体験

 最初に1と2を見ました。
 2は、雨乞いの踊りとの事でしたが、これが岡田あーみんの言う、東南アジアの
へびをどりかもしれません。(不明)

 3では、さあ皆さんでやってみましょうと、みんなで輪になって炭鉱節を踊りました。
動きのパターンを最初に説明してくれて、あとは、掘って〜、掘って〜、・・・の繰り返し
でした。別に強制じゃないんで、年配のオジサンたちは座って見ていました。

 これが終わった後、外に出たら、NIB(長崎国際テレビ)の取材が来ていました。
カメラマンと、音声兼雑用係?と、インタビュー係のお姉ちゃんの3人です。なるべく
映り込むように意識して行動してみましたが・・・いつ放送されるのかわかりません。
インタビューを受けている人もいました。

 たぶん来週(4月5日)の「ひるじげドン」あたりか?大瀬戸の紹介があるので、
その中でやりそうな気がします。
 ※長崎の地元ローカル番組です。長崎以外の方はわからなくてスミマセン。

●池島中央会館

 主に、池島炭鉱を説明したビデオと、写真の展示がありました。古い映画のポスターも
貼ってありました。

 救護隊の装備も展示されていました。

(写真19)


 ビデオは、炭鉱の紹介や仕組みなどの内容で、20分ちょっとです。

 この、ビデオが始まったあたりからICレコーダーをスタートさせて、帰りのバスまで
ずっと録音しました。以下の文章中に、いくつかの録音を載せていますので、聞いてみて
ください。(MP3)

 池島中央会館には、大きな石炭のカタマリが展示してありました。閉山式で、壇上
に置かれていた物かもしれません。

(写真7)石炭


 ツヤツヤしているけど、これはニスを塗ってあるのでしょう。おそらく。


■入坑まで

 第二立坑へ移動し、そこで入坑準備と説明がありました。

 まず、サイズの合う靴を選びます。靴はサイズ別に床に並べてあり、そこから
選んで持ってきます。装備品は、一人分ずつ台の上に並べてあります。

 大きめが良いだろうと思って、27.0の長靴を選んだら結構ブカブカでした。
ゴム長靴ですから、普段履いているひも靴とは違って、ひもで締めないから
でしょうね。

●装備

 私は作業服を着ていきました。その理由は、事前に「汚れても良い服装で」と
指示があったことと、作業服にはポケットがたくさん付いているので、手荷物
無しで済み、すべての行程において、身軽に行動することができました。

 「軍手」、「タオル」は持参するように事前に指示がありました。私は予約時の
電話で聞いていました。ところが、聞いていないという人もいました。ある程度、
忘れることは想定してあったのか、会社側でも準備してあり、借りる人もいました。

 軍手はもちろん手に付けます。タオルは、首に巻きます。理由は不明ですが、
汗を吸い取るというよりも、塵が入り込まないようにするのが目的かもしれません。

 坑内に持ち込めない物があります。発火源となるマッチ、ライター、そしてタバコは
持ち込み禁止です。それらと、貴重品を預かってもらうことができます。貴重品は
各自で身につけていればそれでも構わないのでしょうが、できたら身軽に行動する
ために、手荷物は最初から持ってこないか、預けた方が良いでしょう。

 でかいダンボール箱(しかも少しグニャと曲がっている)を係員が持ってきて、ここに
入れてください、見張ってますからと、大ざっぱな貴重品預かりでした(笑)。

 携帯電話、カメラは坑内への持ち込み可能です。電波が届かないので通話は
無理ですけど。カメラは撮影可能です。
 但し、なくさないように気を付けてくださいという注意はありました。修学旅行生が
サイフや携帯を置き忘れたことがあるそうです。

 さて、装備品は下記の通りです。これらは貸し出してくれます。

  (1)ヘルメット
    ・・・ 自分の経験では、実際に頭をぶつける事があったので欠かせないと
      思います。
       調整があります。ヘルメットの内側に、頭の大きさに合わせるバンドがあって
      これが合っていないと、たとえば、ゆるかったらグラグラします。
      グラグラしないように合わせて、かぶります。そして、アゴヒモをしめます。

  (2)キャップランプ
    ・・・ ヘルメットに取り付けるランプと、腰につけるバッテリーから構成されます。
       バッテリーは8〜10h使えるそうです。外国製だそうです。

  (3)防塵マスク
    ・・・ 実際には使うことがなく、首からぶら下げるだけでした。
       そこらへんのホームセンターで売っているのと同じ物のようです。

  (4)事故救命器
    ・・・ 事故か、自己か、漢字がわかりません。
       火災時に使用する、一種のマスクです。
       一酸化炭素を二酸化炭素に変えて、一酸化炭素を吸わないようにするための
       器具です。口でくわえるようになっています。
       鼻をつまむピンチが付属しています。
       中に触媒が入っていて、90分ぐらい維持されます。
       これを持っていないと入坑できないと法律で決まっているそうです。

       開けると反応が進んで使えなくなるのですが、修学旅行生が勝手に開けて
       しまったそうです。
       なお、今までに火災はあったが、これを使う事態は無かったそうです。

 バッテリーと、事故救命器を腰ベルトに下げます。ベルトはきつく締めない方が
良いです。けっこう重いですから、ベルトの両端を必ずしっかり持ちながら、装着
するようにします。2つの器具は、お尻の方に寄せておきます。そして、キャップ
ランプへのケーブルは、左の脇を通すようにします。

 ところで、これらの装備は何度も貸し出されているものです。神経質な人は、他人が
使った物に抵抗があるかもしれません。まず基本的に、口につける物はありません。
防塵マスクは実際には使いませんでした。
 (帰りがけに片づけの様子を見たら、アルコールとファブ***を準備していました。)


 さて、装備をつけたら、皆さんそれぞれ撮影してみましょう、となりました。

(写真2)自分でカメラを持って撮影するのは難しい。


 なんか、コスプレ撮影会のようでした。

(写真3)係員の方に撮影して頂きました。


 ランプはつけっぱなしにします。これがおかしくて、前に立って説明をしている係員を
みんなが見て聞いているわけですが、その人の顔にみんなのランプの光が当たったり
します。別に気にしていないようでしたが・・・。

 ふと、ロッカーの上に見慣れたダンボール箱を見つけました。あの赤くてハデハデの
模様があるRSコンポーネンツの一番小さいダンボール箱です。超速のシールが
貼ってありました。炭鉱がRSに用事があるかどうかわからないけど、空き箱を再利用
しただけかもしれません。

 さて、ベルが鳴って、いよいよ入坑です。
 ゲートから送り出される時に、「ご安全に」と声をかけられます。雰囲気十分です。

 立坑のエレベータに乗る、といいたいところですが、実際には階段を下りて、裏口から
出てマイクロバスに乗り込みます。実際には、そこから5分ほど走ったところから入坑
します。


■入坑

 写真4の入口から、人車に乗って、斜めに降りていきます。
 最初に説明、そして記念撮影が有りました。

(写真4)人車の乗り場


●記念撮影

 写真4で係員が持っているプレートは、記念撮影用のものです。この位置に
みんな集合して、記念撮影をしました。

 しかし、一括で撮影するのではなく、各個人が持っているカメラを、3人の係員に
渡して、いちいち撮影して頂くという形でした。それで時間のかかること、真ん中の
列の方は中腰で、と言われても、そういつまでもできるもんじゃありません。(私は
真ん中の列の中央でした)

 使い切りカメラのフィルムがちょうど使い切っていて、いつまでもジーッ、ジーッと
巻いてみておかしいなあ?とか、デジカメの電源を入れて渡したら、撮影するまでに
間があってオートパワーオフで電源が切れたり、動画モードで記録してしまったり、
パシャと鳴るのかピッと鳴るのかまったく鳴らないのか、シャッターが切れたのかどうか
よくわからなかったりとか、なんか効率の悪い記念撮影でした。
 私もカメラを持っていましたけど、この様子を見ていたら、自分のカメラを差し出す
気分にはなりませんでした。

 そこで、会社側で一括して撮影し、その写真をあとで郵送するようにして、写真代
+送料+手数料を頂くような商売をすれば良いのではないかと思います。

 ちなみに、写真4でプレートを持っている係員の後ろの壁に貼ってある紙には、
この人車が2年おきに点検を受けているので安心とか、色々書いてあります。

 写真4の左側の物体は、ワイヤーを巻くドラムのようです。使用していません。

●人車

 坑内には係員が2人付き添います。

 人車は、ものすごく狭いジェットコースター?のようなものです。2人がけの席に、
下る方向とは逆に、後ろ向きに乗ります。もし、仮に前向きだったら、座りにくい、
というよりも座れないでしょうね。

 傾斜17度の坑口を見て、そしてそこに立ちながら、もし、ここで転んだら
おむすびころりんみたいに下まで転がっていくだろうか、などと思いました。

 時速16kmで下っていきますが、そこらへんの道路を自動車で16kmで走ったら
とても遅いでしょう。ところが暗闇の中の16kmは速く感じるのです。

 乗車姿勢を基準に言うと、右側から乗り込んで、左側から降ります。逆に、
上がる時は、左側から乗り込んで、右側から降ります。
 異常があった時は、天井付近に貫通しているワイヤーをひっぱると停止するそう
です。

 狭いし、ガタガタして乗り心地は良くありません。海面下65mまで、1分ぐらいで
到着するので、意外にあっけないです。あとは歩いて行きます。

★人車の音(下る時)
 仮にビデオ撮影しても真っ暗だから、かえって音だけの方がリアルかも。
 音で疑似体験してください。→ jinsha.mp3 (約1.5MB)

(写真8)人車を降りたところ


 暗いところですから、カメラを向けても何を撮影しているかわからず、このあとも
まともな写真がありません。

●途中の休憩所のような所

 人車を降りてちょっと歩いた所で、腰掛けられるようになっている場所があり、
そこには、子供たちが書いた安全標語(習字)が貼ってありました。(コピー)
海外研修生の子供も混じっていて、名前をカタカナで書いていました。

 この場所で一旦座りました。係員から、観光事業を行うようになった経緯とか、
いろいろ話があり、現在は万が一の事態でも、無線で坑内と坑外が交信できる
ようになっていると言い、交信テストを体験してみましょう、ということになりました。

 無線機はハンディタイプのもので、黄色いカバーが付けられていたので型番は
わかりません。周波数は800MHzと言っていました。

 交信内容は、予め準備された文面があって、それを読み上げるようになってい
ます。体験者は適当に2人選ばれて、実際にやっていました。

 ところで、なぜ800MHzか、それは説明が無かったのでちょっと自分で調べて
みました。

 独立行政法人 産業技術総合研究所
   通商産業省 工業技術院
   資源環境技術総合研究所
   九州石炭鉱山技術試験センター ※旧研究所のページ
   試験炭鉱概要

 上記リンク先より引用:
>UHF空中波方式坑内通信技術の実用化
> 坑道空間を少ない減衰で遠方まで伝搬する周波数は800MHz帯であることを
>理論的、実験的に明らかにし、このUHF電波を利用するシステムの研究を行っ
>た結果、池島炭鉱の車載無線に実用化された。

 車載無線とは書いてあるけど、伝搬特性は800MHz帯が良いのでハンディ
無線機にも同じ周波数を使っているのでしょう。

 坑内を歩いている途中で、アンテナを見かけました。これはもしかして、無線の
中継用かもしれません?
 ついでに念のため、携帯電話は坑内では圏外となりました。

 それにしても何で役所というのは、こう、どれもこれも名称が長たらしいので
しょう。「独立行政法人」これだけで6文字です。「産業技術総合研究所」これで
9文字です。あわせて15文字です。さらに研究所の名称とか場所とか所属まで
書くと漢字だらけです。まるで漢字の書き取りの練習みたいです。

 また、漢字というのは、威圧的な印象を受けます。たとえば、暴走族が「仏恥
義理」とか、「夜露死苦」とか、「愛羅武勇」と書いたりします。これを毛筆体で
書けば、漢字は本来のパワーを発揮して、さらに威圧感を増します。その筋の
お仕事の方の名刺も、毛筆体で名前が書いてあるのを見たことがあります。
念のため、その筋の方とは関係ありません。以前、ゴミを処分している時に、
そういうのを見かけただけです。


 なお、今回は海面下65mまで行きました。
 下記で紹介されている深さ(130m)とは異なります。
 長崎新聞:池島海底炭鉱さるく (2006年4月12日撮影)

 はっきり聞いていないのですが、深いところを維持管理するためには
莫大な費用がかかるので、埋めてしまったという話がありました。そのため
現在は、比較的浅いところまでしか下らないのだと思います。

●掘削現場

 少し奥の方まで歩いたら、大きい掘削機械が置かれた場所がありました。
 これは、ジェットモグラってやつ?(笑)

 「ロードヘッダ」という機械です。電気で動きます。

(写真9)掘るヤツの先端              (写真10)
 

 福岡の三井三池製作所で作られた機械で、およそ8000万円程度との
事でした。→(参考)三井三池製作所 製品案内を参照下さい。

 先端に付いているトゲみたいなものは、ビットといって、これが岩石を
砕いていく刃物のような役割をします。おそらく超硬合金か何かでできている
のでしょう。そこまでは聞きませんでしたが・・・。だんだんにすり減って
丸くなってくるので交換するそうです。
 ひとつ抜けてしまうと、その前後のビットに負荷がかかるため、どんどん
壊れていくのだ、という話がありました。

 いろいろ細かい説明がありました。(機械や工法についてなど)

 たとえば、こういった大型機械は、どうやって運び込んだり片づけたりするか。
そのままでは持ってこれませんから、分解して運び込み、現場で組み立てます。
組み立てには1週間近く要するとの事です。

 さて先ほど、この機械は電気で動くと書きました。炭鉱では粉塵やメタンガスが
発生することがあります。電気は火花が発生して発火源になる可能性があります。
そのため、ガス警報器を天井から吊して、常にガス発生を監視しています。もし
ガスを検知したら、坑内の電源が一斉に切れるようになっており、あとで
安全を確認しながら上から順番に電源を入れ直していくそうです。ガス検知は
別の手段でもダブルチェックしており、もし何かあったらすぐに連絡をして処置を
するそうです。

 地面を見ると水がたまっていました。見学者を案内する所には足場があるので
水たまりに足をつっこむわけではありません。朝の9時に排水したばかりだそうです。
 この水は、海水ではありません。少し塩分を含んでいる、化石水と言っていました。

 坑内の温度は、地上とあまり変わらない感じでした。100m下がれば1℃
上がるそうですが、この現場は古くからあけているし、浅いので特に温度が高い
ということはありません。

 それから、石炭は、この場所からさらに100m下にあるそうです。

 質問に答えたりしたあと、また歩いて人車のところに戻りました。人車に乗って
地上に帰ってきました。


■島内散策

 散策というよりも、マイクロバスでの移動が頻繁に有り、あちこちに移動する
ついでに景色を見たり、説明を聞いたり、という具合でした。

 空き家となったアパート群の中で、除草作業をしている人たちを見かけました。

 アパートも、工場設備も、自動車も、人の手が入らなくなれば、急速にボロボロに
なるように思います。アパートの木製の雨戸は剥がれ、ガラスは割れ、かつての
発電所は錆びて、鉄板が剥がれたりしていました。
 島を出ていった人が放置したと思われる自動車が、港や空き地にあって、ガラス
が割れてビニールがかぶせてあったり、サビてボロボロになっていました。

 あっという間に島を一周してしまいました。散策だけなら、歩いても十分行ける
かも知れません。

 除草作業をしている人たちを見かけた、と書きましたけど、今後、皆さんに散策を
していただけるように、環境整備を進めているところです、と係員の方がおっしゃって
いました。


■模擬坑道

 模擬坑道とは、地上にあるトンネル(材料を上に上げる為のトンネル)を改造して、
体験や実習ができるようにしたものです。ここでは発破の体験ができます。

 最初に、池島炭鉱の坑内の図面を示しながら、炭鉱の説明を受けました。

 模擬坑道は、いくつかの部屋に仕切られており、上にのぼりながら見学していき
ます。昭和30年代の採炭の再現とか、色々ありました。

●発破!

 削岩機で壁に穴をあけて(実際にはあけない)、そこにダイナマイトを仕掛け、
一段下の部屋に退避して発破をかける、という体験がありました。
 ダイナマイトは、もちろん模型ですので念のため。

★削岩機の音
 音で疑似体験してください。→ sakugan.mp3 (188kB)

 下の部屋に退避して、キャップランプに赤いカバーを付けて目印とします。
 発破と書かれた札の付いたロープを張って、そこから立ち入りを禁止します。

(写真11)発破器


 側面の黒い穴にキーを差し込み、発破!と言って回します。

(写真12)ここから入ってはいけない


 キーを回すと、予め録音された発破の音が、響き渡る仕掛けになって
います。

★発破の音
 音で疑似体験してください。→ happa.mp3 (327kB)

 ダイナマイトは適当に仕掛けるのではなく、順番に崩れていくように、
不発が出ないように仕掛けるとの事です。最高10段階の遅延時間で
順番に爆発させます。

 発破器は、昔からマンガなどで見かけるのは箱にT字のレバーが
付いていて、それをグッと押し込むやつでした。今回見たのは、
カギをつっこんで回すものです。マンガの影響か、すぐにT字を思い
出してしまいます。T字の方が、雰囲気が出ますね。


●でかい石炭のカタマリ

 でかい石炭のカタマリが置いてあり、これは、国会に陳情に行った時の
石炭だそうです。これを持っていって議員さんたちに見せたとか。

(写真18)


 一人選ばれて、防護メガネをかけ、ハンマーで石炭を砕く体験をしました。
割った部分はおみやげに持ち帰って下さい、とのこと。この人だけ?ご心配
なく。帰りに、入り口付近にたくさん用意してあって、袋に入れて好きなだけ
お持ち帰り下さい、とのこと。

●テント

 部屋の中に、ビニールで区切った場所があり、これは何かというと、
弁当を食べる場所の再現だそうです。中に空気のホースが引き込まれていて、
バルブをひねると、吹き出し口から空気が出てきます。

 なぜこのようなテントが必要かというと、粉塵が舞っているから、とてもご飯が
食べられたものではありません。石炭のふりかけをメシにかけて食うことに
なります。だから、このように囲ったテント内にきれいな空気を引き込んで、
食事ができるような環境を作っているわけです。

●一番上のドア

 一番上のドアを出ると、屋外です。貯炭場の上あたりで、港内が見渡せる
場所です。

(写真13)ホッパー


 しばらく説明を聞いたあと、またさっきの模擬坑道に戻り、逆にたどって
入り口から出ました。

●記念の落書き

 最初に入った部屋の壁には、メッセージボードが備えてあり、そこへ自由に
備え付けのペンで落書きができます。感想や名前などを書いてくださいとのこと。

 私も書き込んできました。どれかの板の左上の隅です。名前を英語の筆記体で
書いているのでわかりにくいかも。


■帰り

●第二立坑

 装備をつけた第二立坑へマイクロバスで戻りました。エレベーターの裏口から
入り、階段をのぼって、入坑した時のゲートから出てきたら、おつかれさ〜ん、と
いった具合でした。

 装備をはずして、マイクロバスに乗って、フェリー乗り場へ。

●見送り

 島から転出する人なのか、紙テープをひっぱっているグループがいました。
紙吹雪も散らしたりしていました。(写真14)

(写真14)


 会社の関係者と、出迎え&踊りをしていたおばちゃんたち(赤ジャンパー)の
見送りです。(写真15)

(写真15)


(写真16)さようなら池島・・・・・・・・・


■おわりに

●おみやげの石炭

 私は、石炭を見るのは初めてではありません。子供の頃、島原鉄道の線路ぞいに
住んでいて、レールに沿って歩いていると、石炭がよく転がっていたものです。
いや、とっくの昔に蒸気機関車は引退していましたが、当時の物が何十年もそのまま
転がっていたわけですね。

 だいたい写真17と同じぐらいのサイズの物(7cmぐらい)を拾って、部屋に飾っていた
覚えがあります。これと見た目はよく似ています。その飾っていたやつは、確か、試しに
燃やしてみたんじゃなかったかと思います。

(写真17)


 ところで、石炭を蒸し焼きにしたものをコークスと言って、製鉄などに使います。
これを高校の時に使ったことがありました。

 高校1年の時、工業基礎という科目の中で、機械・電子・建築の全ての科の実習を
しました。電子科であっても、機械や建築の実習をしました。他の科の生徒も同様
です。私も測量をしたり、鉄を削る体験をしました。

 機械科の実習をした頃は、ちょうど真冬でした。ドラム缶を半分に切ったやつに
コークスを入れて、それを燃やして暖をとりながら、ひたすらヤスリがけをしたのを
今でも覚えています。
 実習棟は、床なんか無くてそのままコンクリートの地面ですから、冷え込みました。


●見学

 見学は、あらかじめ予約が必要です。先方の都合もありますので、いきなり行っても
対応してくれません。

●閉山

 石炭が無くなったから閉山したのか?という質問に対しては、じつは埋蔵量は十分
あるけれど、経済的に掘り出すことができないから、という答えでした。炭鉱を維持する
だけでも莫大なお金がかかります。
 国の石炭保護政策も現在は切れてしまっています。

●池島の生活環境

1.学校
 現在は池島小・中学校が併設となっています。
 小・中学校の建物は、前後に並んでいます。小・中学生あわせて20名ほどです。

2.警察
 交番がありました。

3.消防
 池島派出所に、小型の消防車が1台ありました。

4.信号機
 小・中学校の前に、島内で1カ所の信号機(押しボタン式)が有りました。
 ちなみに、LEDではありません。
 我々がマイクロバスで通過した時は、ずっと青のままでした。たぶん、横断する時
だけ赤になると思います。

 小・中学校の前にある理由は、子供たちに信号機を教えて、島の外に出ても
困らないようにする目的もあると思われます。

5.郵便局
 池島郵便局があります。ATMと書いてあったのでATMも有るでしょう。

6.スーパー
 港の近くにスーパーがあるようですが、今回は立ち寄りませんでした。

7.ゴミ処理
 ゴミ処理場が有りましたが、現在は稼働していない様子でした。
 「旧ゴミ処理場」と書かれた比較的新しい看板が貼ってありました。

8.バス
 コミュニティバスと書かれた、黄色いワゴン車がバスです。

9.携帯電話
 通話テストをする暇がありませんでしたが、auは圏外ではありません。
昼食をとった室内ではアンテナマーク1本、屋外で何度か見た時は3本
でした。
 たぶん島内には基地局が無いので、対岸の基地局を利用しているものと
思われます。そうだとしたら結構微妙ですね。松島か大瀬戸か神浦か分かり
ませんが、数キロは離れています。

10.電気
 炭鉱が動いていた時は発電所で発電していましたが、現在は稼働停止し、
大瀬戸から海底ケーブルで引いています。

11.水
 電気と同様に、かつては発電所に淡水化装置があってそこで水を作って
いましたが、現在は海底送水管で水を引いています。

●人口

 マイクロバスで通過する時、ほとんど人を見かけませんでした。
 港の近くで、小学生が遊んでいるのは見かけました。

 猫は結構いました。


 毎日jp(毎日新聞)サイトの2008年2月26日の記事※は、「池島炭鉱:
島を丸ごと”学校”に テーマパークより”本物”実感/長崎」というタイトルで
「池島炭鉱さるく」を紹介していました。

 ※すでに閲覧できず、googleのキャッシュを参照しました。

 テーマパークより本物、そういう見方があったか、と思いました。そう、
これらは作り物ではなく、全て本物の炭鉱施設です。案内してくれた人たちも、
みんな本物の炭鉱マンです。石炭に実際に触れたり、貴重な体験もでき
ました。
 今までなら、炭鉱に就職しないと?できなかった体験と思います。

 出迎えや、弁当を作ったり、踊りを披露してくれたおばちゃんたちも
一生懸命やっているのが伝わってきました。


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