基板の解析


■はじめに

 モノがどういう仕組みで動いているのか、知りたくなるのは自然な気持ちだと思います。
特に幼い頃はそうですね。それだけじゃなくて、子供は好奇心や疑問にあふれているもの
です。

 知りたい、試したい、その気持ちはどうしようもなく抑えられないものです。大人は、そんな
無駄なことをいちいちするなとか言って、やめさせようとします。わかりきっているじゃないか
とか。危ないからやめろとか。でも、そう言われてもどこか、納得できなくて結局やっちゃうん
ですね。

 自分自身、幼い頃には、身近な機械を片っ端から壊しました。たとえばオモチャ、レコード
プレーヤー、トランジスタラジオ、目覚まし時計、腕時計、電話機、カメラなどでした。
 しかしほとんどの場合、元通りにすることができず、中身を理解することもなく、壊したら
それっきりで、親に怒られただけで終わっていましたが・・・。

 さすがに、家で使っているテレビは壊すのがためらわれましたが、後ろの通気孔から
中身を必死になってのぞき込んでいたことを覚えています。以前にも別の記事に書いたと
思いますが、タテのスリットになっている通気孔を割り、大きく広げました。

 いまのテレビの筐体はプラスチック製ですが、昔のテレビ(昭和40〜50年代)は、
木製でした。裏蓋は圧縮材の板で、孔にエンピツなどを突っ込んでグリグリとコジれば、
容易に割れるようなものでした。だから、タテのスリットがたくさん並んでいるところの
間をバリッと割れば、容易に大きい穴を開けることができたのです。

 まあ、そうやって幼い頃から、バラバラマン人生を送ってきたのでした。とにかく、何でも
一度はバラしてみる。しばしば、新品で買ったものを、電源を入れるより先に分解したことも
ありました。

 技術者として仕事をするようになってからは、製品の仕組みを調べて勉強することが
分解の目的になりました。ハハ〜ン、こういうやり方なのか、ナルホド、とか。

 それだけならまだマシで、ひどいのは、前任者がいきなり辞めて(病気とか出社拒否)
引継をしたことが何回もあります。部長が来て、オイ、前田〜、お前が続きやれや、と
おっしゃるわけです。ところが、残されたのはジャンパー線グチャグチャの基板と、
どれが最終版かわからない複数の回路図、書き置きのようなメモ、ぐらいでした。
これが動いているんだ、という基板の現物から、回路図を起こすしかありませんでした。

 また、いろんな試作基板の改造を引き受ける中で、回路図とパターンを深く調べる
ことが必須であったため、結果的に、解析能力はずいぶん鍛えられたと思います。

 ひとつ思い出したのは、Z80用のICEのバッファボードだったか。詳細は忘れましたが、
複数台のICEを導入し、同時に使いたいのに、バッファボードが1枚しか入ってきてない。
納期がかかるから、その1枚を解析して、コピー基板をユニバーサルで2枚作れとか、
そんな雑用もありました。幸い、74HCのロジックICだけで構成されていた為、容易に
回路図を起こして、同じ物を作ることができました。

 現在は、細かい部品やらワンチップになっていて、ワケのわからないブラックボックス
ばかりで、中を見て動作を理解するようなものは少ないけれど。

 ワケワカンナイままに、ワケワカンナイ機械を買って、とりあえず使っているという
ある意味では、おそろしい時代です。


■解析は必須のスキル

 たとえば修理の際に、回路図が無いとできない、で止まっては困ります。

 コンデンサ自体の不良であることがハッキリしていて、それを取り替えるだけとか、
半田が割れているだけとか、そういうレベルの修理なら回路図は要らないかも
しれません。

 そうではなくて、回路の内容を把握した上で修理したいけど、回路図が無い場合
の話です。

 回路図は必要です。でも、もし無ければ(手に入らなければ)、そこであきらめる
んじゃなくて、基板のパターンを追い、回路図を起こせるだけの技術は、身につけて
おきたいものです。


 脱線しますが・・・、何かができなくて先に進めない、というのはチャレンジ精神を
かきたてられますね。

 何か頼み事をしに行ったら、あれがこうだからできないとか、それは無理とか
言われるのは、腹が立ちますね。自分にとって死活問題だったら、そうでしょう。
そんなに簡単にできないって言うなって。どうやったらできるか考えないと。
そして具体的に動かないと。

 そういった障壁の身近な例としては、たとえば「英語」です。
英語がわからん、とか。

 開発環境が英語だから使えないとか、そんな人はいませんか?(私の周囲には
いました。英語だからわからん、って放り出す。殴らないけど殴りたくなりました)

 あるマイコンのセミナーで、「日本語のデータシートが無い!日本語のデータシート
を増やせ!サイトを英語じゃなくて日本語対応にしろ!」と、講師にしつこくかみついて
いたオジサンがいました。

 私は、隅のほうで、イライラしながらそのやりとりを聞いていました。私は、英語が
読めなければ、技術者はつとまらないと考えているからです。

 私が最初の会社に入ってすぐに任されたのは、ただ「学生に近い」というだけの
理由で(学校で習った英語を覚えているだろうとの決めつけで)、AMD社の英文データ
シートを和訳し、そのICを使った製品と検査プログラムを作り上げることでした。

 英語なんかちっとも身についていませんでしたよ。学校でまじめにやっていなかった
せいで・・・。単語がちっとも分からない。ひとつひとつ辞書を引きながら、どうしても
文章の意味が分からないときは、推測して実験で裏付けをとりながら、製品を完成
しました。

 その後も、さまざまな製品の開発や設計に関わってきて感じたのは、とにかく、海外の
デバイスが多いわけです。ということは、英文のデータシートを読むことが必須なんです。
和文のデータシートなんか、いつまで待っていても出てこないかもしれない。ゆっくり
していられません。だから、英語が読める能力は必須だと思うようになりました。


 PICのデータシートの最後のあたりを見ると、世界中の営業所や支社が載っていま
すね。改めて見てみると、中国の営業所(支社?)が、やたらに多いでしょう。英語が
一番になるのは米国のメーカーだから当然ですが、日本語より中国語が優先になる
理由が、これでわかりませんか。日本市場なんて小さいんでしょう。儲からないところに
手間ヒマをかける理由はないだろうと、おそらく、そうだと私は思います。

 日本語より英語を使う人のほうがはるかに多いのです。そして中国は市場がでかい。
人口が多い。しかし日本語は日本人しか使わない。(ケント・デリカット等は日本語を
しゃべるじゃないかといわないでよ、ヘリクツよ)

 それじゃ日本メーカーのマイコンはどうか。最初から全て日本語の資料が揃っている。
それはそうだけれど、ひとつは、参入が遅かったというのが有るでしょうね。マイコンの
フラッシュ化が遅れた。私は1998年頃から、(旧バージョンの改良版を検討の為)Z80
互換で、フラッシュのCPUが無いか探し回っていて、最初は川鉄で(ROM外付けで)、
最終的にはH8に落ち着いた経緯が有ります。本題からはずれるので、細かい話は
省略します。最初にPICに飛びついたユーザは、ずっとPICにくっついて、14ビット、
16ビットあたりまで、変なアーキテクチャだとかハマる石だとか愚痴りながらも使って、
32ビットとかDSP等の流れに乗っかり、いまさら他のマイコンを振り返ったりしない。
まさにPIC教の信者!(笑)

 日本メーカーのマイコンは良い物を作っていると思うんだけどねえ・・・。

 個人的な経験では、基板付きの解説書を買って、ウン、これは良いと思い、さっそく
新規案件に採用しようと思って代理店に聞いたら、入手性が怪しい状態で、
あきらめた事もありました。ハッキリ言って、私が在籍していたような会社は、
中小零細ばっかりでした。そんなところのために大手が動くかって感じですね。
何個買うんだよって感じでね、せいぜい千個でしょ。納期が何ヶ月もかかるって、
やってられないですよ。
その点、PICは秋葉原などの小売店や通信販売でも容易に手に入り、安いから
クセがあって使いにくいけど、使ってしまうんですね。

 PICの解説書が次々に出て、売れるのは、データシートが英語だからというのが
ひとつの理由じゃないかな。日本語の解説書のおかげで、ずいぶん助かった方も
多いことでしょう。

 解説書を読むと、ざっと半分はデータシートの内容でしょう。そして半分は、そのPICを
使った応用例とか工作が載っている。それとプログラム。そこまで載っているから、
ユーザにとって参考になるし、価値があるわけです。

 初期の頃に苦労して、英語のデータシートを読みこなしてPICを使い始めた方々は
いま、そうやって本を書いたりして活躍できるんですよ。ひとより一歩、先に出ようと
思うなら、こういう方々のように行動しなければならないと思います。

 開発の仕事をしているなら、なおさら、何々ができないとか、できないから先に
進めない、なんて言えないです。それじゃ、何が開発なのかって話になります。

 たかが英語ぐらい、と、まずは気持ちだけでも持つようにしようではありませんか。
(良い言葉ではないけど、私は、「しょせん毛唐の言葉じゃないか」とよく言います)

 タイムマシンを作れというのは無理だけど、英語の勉強はできる範囲です。

 いま私は、世界各国の電子部品や基板の業者などとメールで連絡をとりあっています。
こんな事を言うと、英語の先生に怒られるかもしれませんが、学校で習った厳密な文法
で書かれた英文じゃなくて、けっこうブロークンです。自分も相手もそうです。難しい
文脈が書けないから、言いたいことを分解して、コマギレの英文をつなぎあわせて、
全体的に意味を伝えようとしたりもします。(直接の会話だったら、身振り手振りと
バラバラの単語の羅列になるでしょうね)

 あるインド人なんか、全部大文字で書いてきました。しかもI LOVE U(例文)のような
具合に、YOUをUに略したりして、まるでCW(電信)の略語みたいですよ。スペルの
ミスも多いから、たぶんこうじゃないかな、と考える必要にもせまられる。

 だけど、こうして実際に英文でやりとりをすることが、実践的な英語の勉強になって
いると思います。必要にせまられないと勉強できないですねえ。相手が日本人だとして、
英語の勉強をしたいから英語でやりとりしよう、と言っても、やはりどこかに甘えが
あるし、緊張感がないです。会社で、英語だけで一日すごそうといっても、やはり
甘えがある。いっそ、どこか海外に一人で放り出されて、チケットを売っている店を
探して、空港へのバスの乗り方を聞いて、・・・という具合に、生死をかければ(大げさ)
身に付くんじゃないかと思います。

 最近、日本語を勉強中の台湾人と、英文でメールをやりとりして、英語と日本語を
チャンポンにした文面になったりして、もはや何がなんだかわけがわかりません。

 私の実力は、英文を読めば大まかにく意味がつかめる程度で、まだまだ発展途上
です。でも、わからない単語を調べる頻度も減ってきています。英作文は、残念ながら
翻訳ソフトの助けを借りることもありますが、そのまま使うのではなくて、英訳された
文章を和訳してみるとか、ちゃんと文章として正しいかどうかなど、自分で声を出して
読みながら、辞書をひいたりして、確かめてから使うように心がけています。
(実際のビジネスの取引です。商品の注文など、金銭がからむやつとか、込み入った話
などが正確に伝わることが重要ですから、非常に気を遣います)


 解析の話に戻ります。

 なにかの装置を分解してみて、基板が出てきた。細かいパターンがギッシリですね。
そんな細かいものを追いかけていくなんて、とてもできないと思うかもしれないけれど、
天才しかできないわけではないです。コツコツやっていけば、誰でも必ずできます。

 いや、コツコツやっていくしかないのです。地道な作業です。要領とかコツは有るけど
全てに通用するわけではないです。要領といっても、せいぜい、バス配線とか電源の
パターンは、まとめて処理できるから楽だなあ、ぐらいです。

 はっきり言って、この世界は、自分にとって都合がいいようにできていません。世界は
自分のためにあるのではない。何もかも、自分の思い通りにいかないのが当たり前だと
思うようにします。そのように発想を変えないと、とても生きていけません。

 それではどうするかというと、思い通りになるように行動します。曲がっている物は
叩いてまっすぐにする。中が見えなければ穴をあけてみる。さかさまにしてみる。揺さぶって
みる。発想を変えてみる。そんなのナンボのもんじゃい、と開き直ってみる。自分から
何らかのアクションを起こす。ダメもとでやってみる。とにかく行動しないと、前に進めません。

 ICの下に隠れたパターンが追いにくいのなら、ICを全部はずしてしまえば、見通しが
よくなります。しかし、半田吸い取り機がなかったら?いちいち吸い取り線や、「スッポン」で
抜くのは大変です。だからできません。(証明終わり)

 ・・・ではいけません。

 できない理由を並べるのではなく、できる方法を考えます。冒険野郎マクガイバーに
なりきってみましょう。(実際のマクガイバーは疑問のある事もやっていたが作り話ですから)

 ひとつの方法、ICのピンを根本からニッパーで全部切ってしまう。残ったピンは、半田を暖め
ながらピンセットで取り除いてしまえばいい。これなら普通のハンダゴテがあればできます。
(根本というのはパッケージの根本です。基板側ではありません。パッケージの根本のほうが
切りやすい)

 復元の必要がなければ、これで十分です。もし復元の必要があっても、ごくありふれた
TTLやC−MOSのロジックICだったら、安いからピンを全部切って捨ててもかまいません。

 しかし、それはいつでも必ずしも許されるとは限りません。借りた物をコッソリ解析する時(笑)
なんかがそうですね。よその商品サンプルを借りたけど、今日の夕方に返却しなければ
ならないというときです。解析されたくないから、貸したくないし、貸しても短時間だと言われて
借りたわけだ(爆笑)。だけど参考にしたい部分があって、絶対調べたい。(パクりたい。ゴニョ・・・)

 主にPICなどのワンチップマイコンを利用した装置なら、それを中心にして回路を追うのが
やりやすいでしょう。基板上のほかの回路、たとえば電源回路なんかは分かり切っている
から、使っているデバイスを控えておくぐらいで、たいていの場合は深く追う必要はないです。

 そういえば、導通テスターの製作記事をいくつか見ると、小さい抵抗値の差を判定できる
ものがあったりしますが、もしかすると基板の解析用に考えたのかもしれませんね。

 専用の導通チェッカーが無ければ、アナログテスターを使います。デジタルはダメか?
反応が遅いからダメです。触れた瞬間に針が振れるアナログでなければなりません。
デジタルは、数字がだんだん0に近づいていって、やっと、ピー、ですもんね。かったるい。

 単にピーとなるやつじゃアナログでもダメですよ。ちゃんと0Ω(超電導ではない)が
読めなければならない。微妙な時があるからね。それが不便だから、さっき書いたような
導通チェッカーがあるのだと思う、というわけです。

 とりあえず、アナログテスターを抵抗レンジにして、横目でにらみながら、かたっぱしから
パターンを追ってみましょう。


■回路の読み取りと、回路図の起こし方

 とにかく基板のパターンを丁寧にたどっていって、まずは、部品同士の接続関係を
明らかにします。その時のメモは、見た目には汚くても正確な情報が記録されれば
ヨシとします。

 清書するのは、あとで良いです。

 回路図の形にならなくても、ネットリスト、つまり接続関係がわかる表でも良いです。
IC何番の何ピンから、抵抗R何番のどっちのピンとコンデンサC何番のピン、といった
具合に、同じ接続関係にある(同一信号線上の)信号ごとに書き連ねていきます。

 パターンが長くて、たどりきれなくても、必ず、同じ信号にあたるものは一度で全て
たどりきってしまわなければなりません。あとで、はダメです。

 同じところを2回たどらないように、ある大きいIC(ワンチップマイコンとか)の1ピン
から順番にたどるようにルールを決めたり、終わったところのICのピンや、パターンに
印を付けます。終わってからアルコールで洗えば落ちます。

 さすがに、細いパターンがギッシリ並んで、長く走っているパターンを1本ずつ追う
のは、目と神経が最高に疲れますが、目を充血させながらも根性で追っていきます。

 データバスにつながっているデバイスのように、だいたいわかりきっている場合は
楽です。出力ポートに74HC273がたくさん使われているけど、バス側は3・4・7・8・
13・14・17・18の順番でD7〜D0に対応しているな・・・というのが分かれば、
しめたものです。半分は終わったなと、ニヤニヤしながら、一気にチェックを済ませ
ましょう。テスターで各々のICのピンを当たった方が早いでしょう。但し、漏れがない
ようにします。

 ICの形を、いちいち描くのが面倒だったら、データシートに載っているICの図面を
コピーして切り貼りしましょう。

 一例として、東芝の汎用ロジック(74HC等)のデータシートがちょうど良い感じです。

 

 これは、あるメーカーのパチスロの主基板の回路図を起こしたもので、その一部に
なります。こんなふうに、ICの形を切り貼りすれば、手間が少しは減って、楽ですよ。

 パチスロは全然やらないし分からないけど、何かメーカー仕込みがあるんじゃないか
とか言う奴がいたので、地道に回路図を起こすところから始めたんじゃなかったかと
思います。もう5年以上前のことなので忘れましたが・・・・。

 パチスロの主基板なんかは、解析が簡単な方です。それには理由があります。
一言でいうと、「規制」のためです。
 まず、DIP部品のみを使うことになっています。表面実装部品はダメです。つまり、
大きい部品だけになります。そして基板は、両面板までとなっています。4層とか、
多層はダメです。

 パターンの引き方も、だいたいきれいに揃っているのが多いです。見通しの良さが
求められているのかもしれませんね。だからパターンが追いやすいのです。

 あとは、コネクタに空きピンがあってはいけないとか、色々細かい決まりがあります。
たぶん過去に、悪い事をしたメーカーが多かったかもしれませんね。その対策として
あれこれ条件をつけられたのかもしれません。詳しくは知りませんので、念のため。

 ところで、さっきの図は、IC同士のつながりを示しただけに過ぎないでしょう。

 次の段階として、動作を理解するということが必要になりますよね。そこで、必要に
応じて、ゲートレベルの回路図に書き直したりします。



 これは、パチスロのスタートレバーからの入力部分を抜き出したもので、実測波形と
あわせて、回路動作を追ってあります。この回路から先につながっているカウンタが
ラッチして、レバーを叩いた瞬間の乱数値を保持する仕組みですね。

 このようにして、ただパターンを追うだけじゃなくて、波形を見たりしながら理解を進め、
謎をときほぐしていくわけです。


■炊飯器 〜入門編(片面基板)〜

 以前にバラして遊んだものですが(0034をご参照下さい)、いまも現役で
使っています。

 もう、8年目です。「もう」じゃなくて「まだ」かな。

 放射能シールがイカす。

 私は新製品にあまり興味がないし、物持ちが良くて、自分で修理または
予防処置を施すので、新しい物を買わずに済んでいます。この炊飯器も、
基板の半田割れを予想して、半田付けをやり直しておいたので、なかなか
故障しません。

 こんな安物、長持ちさせてどうすんだよ、とケチを付ける奴に一言いうよ、
うるさい。

 よく、「○○が壊れた」、「△△が寿命なので買い替えた」などと、よく故障
する人がいますが、何でそんなに壊れるのだろうかと思います。電源電圧が
異常なのか?謎ですね。

 我々、専門家には想像のつかない事態もあります。

 下宿のバーサンが、テレビが壊れた、というのです。症状を聞くと、うつらない、
といいます。難しそうだな、と思いながら工具を持って行ったら、単に、よそに
住んでいる息子が持ってきたテレビが、地元のチャンネルに合ってなかった
だけで、設定し直したら解決しました。(そして、長崎市内はチャンネルが少ない)

 でも、うつらない以上は、「壊れた」と言うのだろうと思います。

 また別の人ですが、壊れた、買い替えたい、というので、とりあえず調べに
行ったら、アンテナ線がはずれていただけ。どうやら、家具を移動した時に
抜けてしまったようです。
 ほら、これが原因でしたよ、と説明しても、いまひとつピンと来ていない様子で
した。いろいろ言ったけど、これ以上、説明できることはありませんでした。


 さて、ほとんどの家電製品は、片面プリント基板を使用しています。その結果、
多く発生する故障のひとつが「半田割れ」です。

 私たちは、半田が柔らかい金属であることを知っています。フニャフニャですね。
そして、温度サイクル(冷えたり暖められたり)や、荷重によるストレスで金属疲労を
起こしヒビが入ります。

 発熱の大きいパワートランジスタやパワーIC(放熱板に付いていることが多い)、
大型の抵抗などの半田が割れることが多いです。

 電源を入れたら画面が横一で、30分ぐらい放置するとブワッと上下に広がって
正常にうつるとか、叩くとうつったりうつらなくなったりするとか、そういうのは半田
割れが多いです。



 上の写真をよく見ると、微妙に、円を描くようにスジが入っていませんか?
 これがハッキリしてくると、容易に動くようになります。部品をゆさぶると、グラグラ
はずれてしまいます。テレビだったら、叩くとうつったりうつらなくなったりします。

 これは片面基板の宿命でもあります。

 穴を大きめにあけてありますから、部品のリード線は、ほとんど半田だけで固定
しているようなものです。その半田は、柔らかく、もろい金属です。半田の量に
よっても寿命が変わってきます。

 家電品はコストダウン最優先ですから、どうしても片面基板を使うことになります。
それが寿命を決める一因にもなっています。

 もし、国産の優秀な工場で作った、ガラスエポキシ両面スルーホール基板を使い、
半田付けは宇宙開発の現場で活躍している職人が手作業で行えば、まず、半田付けと
基板に関する故障は限りなく少なくなるでしょう。テレビの寿命なんか、10年どころでは
なくなります。ものすごく長持ちします。

 だけど、そんなテレビは、とても気軽に買える値段ではなくなるでしょう。
 そういうテレビがあっても良さそうですけどね。テレビのロールスロイス、いいじゃ
ありませんか?

 半田槽でいっぺんに半田付けしたほうが、仕上がりがきれいだから信頼性も高いか
というと、絶対そうとは言えません。個別の部品の温度条件まで細かく考えていない
からです。単純に言うと、大きい部品の半田付けには加熱時間がかかります。いっぽう、
小さい部品は短い時間しか必要としません。大きい部品に合わせるために、小さい
部品は余分に加熱されることになります。
 高い技能を持った職人が、手作業で半田付けするのが信頼性は高いです。

 片面基板なら安くなるかと単純に思ってはいけません。産業機器の基板を作って
いる基板工場に、片面基板を発注しても、想像していたような安さにはなりません。
ガラエポ両面基板と、大差はありません。

 なぜかというと、民生品の片面基板は金型で穴をあけるからです。外形の切り出しも
型です。いっぺんに、ポンとあけてしまいます。一方、産業機器の基板工場では、
いちいちドリルであけます。外形はルータで切り出します。これはガラエポ基板でも
同じ工程です。

 秋月電子のキット、昔の奴はユニバーサル基板みたいに全部の穴があいている
プリント基板だったでしょう?あれは、おそらくユニバーサル基板と同じ穴あけの
型を使うことで、コストダウンをはかっていたと思います。基板の素材は、たしか
紙エポでした。

 型で抜く、と書きましたが、もちろんそのための型代が必要です。たとえそれが
100万、200万かかったとしても、民生品は生産数が多いですから、割り算すれば
それほどでもなくて、生産効率と時間を考えたら安いです。


 実家にあったトリニトロンのテレビは、半田が最初から薄くて、よく故障しました。
全ての箇所に半田を盛り直したぐらいです。本当に大変な作業でした。これが
まさにソニータイマーと呼ばれる現象の原因じゃないかと個人的には思っています。

 ちなみに、テレビのフライバックトランスなど、特に耐久性と安全性が要求される
箇所にはハトメを打ち、補強してあります。もしハトメ無しで、半田が割れた場合、
火花放電が起きたら・・・火災の原因になることがあるからです。



 さて、炊飯器の内部を見てみましょう。



 米をといで、あとはタイマーを仕掛けるだけになっていますね。やばいですね。
もし、元に戻せなかったら、もったいないですよ。農家出身だから、米を粗末にする
ことは遺伝子が許しません。茶碗に米粒をひとつも残さず食べるのが当たり前なん
です。

 好き嫌いが多いくせに、という奴、だまれ。(米だけは残しません)


 炊飯器がダメでも、ナベで炊けばいいけどね。ほかにも方法は色々あります。
テクノロジーに染まってはダメです。核戦争などで、こういったテクノロジーが不意に
失われる時があるかもしれません。幸いにして生き残っても、EMPの影響で、
半導体はパーです。そんな時に困りますよ!

 さて、まずは「パネル基板」です。

 

 これは本体の正面に付いている、操作・表示部の内側に入っている
基板です。

 でかいICが付いています。これは三菱のワンチップマイコンです。

 データシートが入手できないか、以前に分解した時から探していますが
見つかりません。たぶん4ビットだろうとは思います。

 こいつが火加減をしてメシを炊いているんだな。4ビットのくせに
なかなかヤルじゃないか。

 毎日のようにお世話になっている。私が起きる前から、カチッ、カチッ、と
リレー音を響かせてメシを炊いているから、こいつに足を向けて寝られない。


 さっきの写真の上側に見えていた水色のやつ、セラミック発振子だろ、
こいつをクロックアップしたら、メシが早く炊けるな。(アホ)

 M34200M4-422SP と書いてあります。

 クロックアップしたら、時間が短くなるから生煮えになると思います。やってみないと
確かなことは言えないけれど。

 さっきの写真の基板パターンをご覧になって、どうでしたか?ちょっと見た目には
複雑に見えますが、やってみれば、意外にどうって事はありません。だから、
入門編です。

 片面ですもん、楽ですよ。両面をたどらなくていいから。

 もう1枚の基板は、底面にあります。「電源基板」です。



 これは主に電源と、パワー系の制御をする基板です。

 右側のほうが黒ずんでいるのに気づきましたか?
 これは、発熱部分に特有の現象です。発熱によって基板が変色します。
安いベーク基板だから顕著にあらわれるんですが、ガラエポ基板でも変色は
みられますよ。

 熱が出そうな抵抗がいっぱいですね。でも、なんで熱が出るか?
 そもそも、なんで小さい抵抗がいっぱい並んでいる必要があるのか?
 それを、回路図を起こしてから読み解きます。



 その抵抗部分の裏面を拡大しました。
 最初に述べた、予防処置は、ここにも施してあります。半田割れが発生しやすい
部分の半田付けをやり直し、半田を盛り上げています。

 古い半田の上にそのまま盛り上げるんじゃなくて、面倒でも古い半田を除去
してから、新しい半田を流します。古い半田は変質していると考えてください。

 上の写真のパターンを見て、どうですか。どうやら抵抗たちは、直列につながって
いるようです。複数の抵抗に、発熱を分散しようとしていますね。

 そして、抵抗の下に穴があけてあります。放熱のためですね。こうして、設計思想
をも読みとる眼力を持つようにします。

 なぜそこに穴があるのか。なぜこのような構成になっているのか。見た物を
そのまま受け流すんじゃなくて、素朴な疑問をもち、それらをひとつずつ明らかに
していってください。


 「パネル基板」と「電源基板」との間は、たったこれだけです。フラットケーブル1本
だけです。これ以外の配線はありません。



 この中には、当然、電源とGNDは含まれているけど、温度とかヒーター制御の
信号とかもあるのでしょう。

 たった7本で、しかも1本は空きピンですから実質6本しか使っていません。
 そう考えたら、単純なものです。
 だって、ヒーターをON/OFFするのと、温度の監視だけでしょう。

 だから、ここから切って、別の基板をつないで制御をハイジャックしても良いですね。

 PICにメシを炊かせたらいいんですよ。アメリカ生まれのアメリカ野郎に、米を
炊かせる。

 ついでにμIPサーバを組み込んで、LANにつないで、炊飯予約とかをやらせる。
Webカメラをつけて、世界中から、うちの炊飯器にメシがどれくらい残っているか
見えるようにするとかね。

 ハッキングされて、米をセットしていないのに炊飯スイッチが勝手に入るとか。

 冗談はこれくらいにして、炊飯の制御信号が単純だとわかったから、ここから
信号を取り出してデータロガーにつなげば、炊飯パターンをパクることはできるでしょう。

 つまり、ワンチップマイコンのROM吸い出しができなくても、外部からの推定ができ
るというわけです。但し、いろんな条件について調べなければならない。

 暗号化LSIの解析で、消費電流の変動パターンから内部動作を推定してクラックするって
のがあって、それに対して、暗号化LSIを作る側も、その手が使えないようにするための
設計手法を研究している、ってのがありますけど、面白いですね。

 炊飯の場合、米の量と水温と、水の量などがパラメータですけど、ちょっと思いつきですが
1合とか2合とかの線にピッタリ合わせなくて、中途半端に水を入れたらどうなると思います?
あるいは、たくさん入れすぎたらどうなりますか?

 この炊飯器って、水をたくさん入れるのが、「おかゆ」を炊くときの条件です。当然、正面の
操作パネルで「おかゆ」モードにしてから炊飯ボタンを押すんですけどね。
 じつは、一度も試したことがないのです。おかゆモードは。

 なんか、メシの炊きそこないがグチャグチャになったから、無理矢理、おかゆモードを
付け足したんじゃないだろうなと妄想したりしています。

 おかゆ、まずいイメージしか浮かばない。
 おかゆなんて、私にとっては病気で具合が悪い時の、まずい味しか思い浮かびません。

 食欲がなくて、何を食べてもまずい時に、何か食べなさいと言って、ムリヤリ流し込まれ
るやつです。味がないです。せいぜい、梅干し程度です。

 私にとって、 おかゆ=病気 です。具合が悪くて、だるい感じ。絶対、食べたくない。

 胃が悪いくせに、固めに炊いたメシが好きです。


 さて、電源基板の拡大写真をご覧に入れましょう。

 左1/3


 中央2/3    右の写真は、右3/3
 

 電圧の高い回路ですから、パターン間のギャップや、あるいは大きい電流に対して
太めになっている部分などが、読みとれるでしょう。


 もう、いきなりですけど、基板をたどって起こした回路図をご覧に入れます。

 ハッキリ載せるのは支障があったらいけないので、適当につぶしてあります。

(というよりも、スキャナで取り込んだ巨大な画像をどうやって、ハッキリ見られる
状態に縮小できるのか、わからなかった為。PDFならできるけど、PDFを踏むのが
イヤだからな。あれは犬の糞を踏んだ感じがするからな。ブラウザが重くなって、
アッ、PDFだった、クソ〜って。)


 「電源基板」の回路図



 つぶれて見えませんが、ほとんど全ての部分の電圧が記入してあります。
さっきの、たくさん並んだ抵抗の分圧の様子が、よくわかりましたよ!

 トランスレス回路、つまりAC電源との絶縁がされていない回路ですから、
電源基板はもちろんのこと、パネル基板の回路にも手で触れてはいけません。
もし、信号を観測したり、外部回路を接続して実験しようという時には、絶縁の
処置が必要です。


 「パネル基板」の回路図、全2ページ

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 パネル基板の回路図は、マイコンを中心にしてパターンをたどっていく方法が
合理的でした。

 左端の数字は、マイコンのピン番号です。
 あるピンを起点にして、それにつながっている物を書き出しました。


 次の図は、トライアックAC03DGM(NEC)の動作モードを説明しています。


 トライアックとは、双方向のサイリスタのことです。単純に言うとAC(交流)用ですね。
交流でも直流でも使えます。

 トライアックとリレーが、底面と胴のヒータを制御しています。
 次の図は、その接続関係を示します。(TFは温度ヒューズです。)


 リレーは底面ヒータ、トライアックは底面と胴ヒータを制御していますね。

 ヒータの制御は、どんなパターンがあるでしょうか?
 炊飯器そのものは、炊飯と、保温の2つのモードがあります。

 炊飯時は底ヒータだけだろうか?
 早朝からカチッ、カチッと鳴っているから、リレーがONしているのは
間違いないです。

 保温時は、リレー音がしません。おそらく、トライアックのみで
温度制御しているものと思われます。温度を一定に保つように、ONする
時間を細かく制御しているはずです。

 トライアックをONしたら、底面ヒータと胴ヒータに通電します。
 リレーがONしたら、底ヒータしか通電しません。

 説明書に、保温時はメシを中央に寄せるように書いてありました。胴に
接していたら、乾いてパリパリになるから?


 ところで、温度センサは底面に付いており、サーミスタ(温度で抵抗値が
変わる)を使用していました。
 緑色の線のものです。

 炊飯器は、どうやって釜の中に入っている米の量を知ることができるでしょうか?

 当然、釜の中には水位計や、カメラなどは付いていません。ひとつの方法は、
ある一定時間の温度上昇のカーブを見る、というやり方があります。

 ところで、リード線の見た目がちょっと変わっていますね。
 これは、ガラスチューブを使用したもので、耐熱性があります。



 底面ヒーターの接続部分も、ご覧のようになっています。
 半田付けは当然できませんね。だから圧着接続されています。


 炊飯の原理について・・・

 初期の頃の炊飯器はマイコン無し、水の蒸発を利用していました。外釜に
コップ1杯の水を入れ、それが蒸発しきったら100℃以上になるので、
バイメタルが作動して電源が切れました。

 そのほか、磁石がある温度以上になると磁力を失う原理(キュリー温度)を
利用したものもありました。釜の底にくっついていて、水が少なくなると温度が
上がって、ある温度で磁力を失い、離れることで接点を切るのでしょう。

 炊飯とは直接関係ないけど、ラーメンモード付きの炊飯器がありました。
学生の頃、相棒が買ったものです。単に炊飯器で即席ラーメンを作ることが
できるというものですけど。いまは無き「デンキのカホ」で買ったのを覚えています。

 ガスコンロにナベでラーメンを作る時と同じで、一定の沸騰状態を維持でき
れば良いから単にヒーターをつけっぱなしにしていただけと思います。

 そうだ、ラーメンを作る時に、卵を流し込んだのを覚えています。なぜか
卵の両端に小さい穴をあけて、口をつけて息を吹き込み、中身だけ釜の中へ。
そうして残った殻を、なんとなく集めてみたり。

 たしか「ムー」(笑)か何かに、卵の殻の穴をふさいで、日なたに放置して
おくと、中の空気が暖まって、浮き上がると書いてあったのを真に受けたんだな。

 あとで思えば、そんなわけねーじゃん、だけど・・・。

 かなり本気にしていて、ワクワクしながら殻を集めて、屋上にのぼり、
暑いところで卵が浮き上がるのを待っていました。

 待てど暮らせど、自分が暑苦しいだけで、いつまでたっても浮かばない。意味無し。


 これ以外にもその当時、「浮く」ものに興味があったらしくて、こんな事もしていました。

 1990年頃、長崎市内・某所にて

 これはヘリウム風船に、リチウム電池+LEDをぶら下げて、飛ばしている様子です。

 光が見えなくなるぐらい、遠くまで飛んでいくのをみんなで見送りたかったんでしょうね。
ホント、思いつきですよ。手紙をつけたのかどうか忘れました。付けたかもしれません。
見知らぬ誰かが発見したら、連絡くれないかなってね。

 リチウム電池(CR2032)とLEDだけだから、そんなに重くはないでしょ。そう思うけど
風船にとっては、相当なお荷物でした。風船をひとつずつ足していって、4つか5つで
ようやく浮くようになったんです。

 下宿の屋上から飛ばしたら、隣のビルに落ちそうになって、ヤバイ、ってんで相棒が
飛び出していって、乗り移って救助してきた(笑)

 さらに風船を増設して、もう一度飛ばしたら、今度こそは順調に飛んでいくだろうと・・・
ところが雨が降ってきたせいで、風船が濡れてしまい重くなったんだな。車道に落ちて
しまった。手紙に連絡先を書いてあったから、ヤバイですよ。ヘタするとケーサツが来る
じゃない(笑)。急いで回収しないと。

 自動車の通行を妨害してしまう、まずい、危ない、というので大騒ぎした覚えがあります。
ヒマだったね、学生の頃は。まだ19才だったからガキですよ。下宿のみんなと大騒ぎ。
勉強しろよ、って思うね。

 そのあと、風船を飛ばすのに飽きて、今度はヘリウムを吸引して遊んだっけ。
「ガァ〜」って、変な声になったりしてね。ひとりずつ回しながら吸って、予想外の声が
出るもんだから、腹がよじれるぐらい大笑いして。ほんと、バカだったね。
※良い子はヘリウムを吸引しないように。
1990年ごろの長崎 爆心地公園(原爆落下中心地) 

 見たくもないでしょうけど、その当時の私です。こういう写真を懐かしがる中年
オジサンになってしまいました。18年ぐらい、あっという間ですよ!光陰矢の如し。
学生諸君は気を引き締めるべし!「いましかない」という気持ちで!!

 左の写真は、長崎市松山町の「爆心地公園」です。改装される前の状態です。
私は平和公園よりも、爆心地公園のほうが好きなんだな。祈念像のある平和公園の
ほうがはるかに観光客が多いけど・・・。

 何も知らなかった頃は、祈念像が爆心地だと思っていました。違うんですね。
専門学校の学生になり、長崎市に住んでから、初めて爆心地公園を知りました。

 この無機質な塔は、見た目は地味かもしれないけど、ここに原爆が投下された
事実と中心地を示しています。ただ、純粋に、それだけです。(ここが大切)

 爆心地をどうやって調べたか、というと、私が原爆資料館の説明を見た記憶では
被害の状況を調査して、測量して求めたのではなかったかと思います。たとえば、
壁などに焼き付いた模様の角度とか方向です。原爆は上空数百メートルで爆発しま
す。細かいことは忘れてしまってごめんなさい。そして、最初に位置が定まった時、
ここには焼けた木の柱を立てたそうです。その写真の展示を見た事があります。

 当時、通っていた学校は爆心地公園の向かい側にありました。

 右の写真は、「竹の久保公園」かな。長崎西高のすぐ近くにある公園です。
中華街で買った中国帽子をかぶって、ポーズなんかとっちゃって。この公園は、
いまでもあまり変わっていません。でも、近くの建物や風景は変わりました。
そして、この18年ほどの間に、知っている人が何人か亡くなりました。

 城山町に九州電力のビルが建っていますが、この当時は、まだ無くて
たしか郵便局があったと思います。たしか、北郵便局だったかな。仮設だった
ような気がします。そう、電停の近くに北郵便局を新築していたのではないかと?

 九州電力のビルが建つ前は小さい公園があって、道路の向かい側にお好み焼き屋が
あり、そこでよく相棒と昼飯を食いました。公園でパンを食うこともありました。
そこのコカコーラの自販機に、なぜか「メッコール」があって、おもしろ半分に買って
飲んでみたこともあったな。

 休日に相棒がいないので、どうしたのかなと思ったら、「例の公園でアリの
観察をしていた」という。謎の行動でした。ちょっと理解できないところもありましたが、
いまでもずっと親友と思っています。

 その相棒が、生活費の節約のために、というので炊飯器を買ったのでした。
近くのコンビニのヤマザキデイリーでアルバイトしながら・・・そのコンビニも
現在は有りません。なんか、炊飯器ひとつで、いろんなことを思い出してしまうよ。

 下宿の洗面所で米をといでいたら、おばさんから、汚れるとか何とかで、注意された
んだっけ。それで、下宿で米をとげなくなって、しょうがないから竹の久保公園の
水道で米をといでいたらしい。そうそう、私がカップやきそばのお湯を捨てていた時も
ゴチャゴチャ言われたもんな。

 下宿のおばさんと、みんなうまくいかないことがあって、1年目でほとんどの人が
出てしまったけど、自分を含めて3人は残ったんです。いろいろ不満もあったけど
よい社会勉強になったと考えるのが妥当でしょう。


●さいごに

 炊飯について、参考になるサイトの紹介です。

 「新・電子立国 第2回 マイコン・マシーン〜ソフトウェアが機械を支配する〜」で、
炊飯器のソフト開発を取り上げていましたが、それに出演していたスタッフの一人が
勉強会で話したときの内容が書いてあります。

 第22回 食べた!学んだ!カミアカリドリーム第2回勉強会<後半>
 (トップページは、 ankome通信 です。勉強になりますよ。)

 最初の弱火で吸水させるとか、なるほどと思いました。
 この話の中で、炊飯のメカニズムをかなりオープンに説明しているから、これだけで
基本的には炊飯プログラムが作れそうな気がします。本当のノウハウは、含まれて
いないだろうけど。
 だいぶ上のほうに記しました、水位線(水加減)と火加減の話なんかも、書いて
ありましたよ。


 それから、こういうサイトもありました。

 先生のための実践事例アイディア集Vol.9
 「はんごうでマイコン炊飯器をつくろう!

 古いコンピュータを有効に活用する・・・昔のPC-9801なんかはI/Oアクセスが簡単
にできるからなあ。たぶん「新・電子立国」を見て思いついたのかな?番組中でも、
実験用の炊飯器はパソコン(HP社)で制御していましたね。


●私と炊飯

 私は味音痴だから、メシなんて炊けりゃいいんだよ・・・ってなもんです。新製品は
ココが違うとかナントカ言って売り出されていますが、カンケーネー買う気ネー、ですよ。

 無駄に金を使いませんし、自分で修理するから、まさに資本主義の敵でしょうね。

 でも一度だけ、ガスコンロと土鍋で炊飯をしてみたら、ちょっとうまかったかな?という気が
します。底の方がちょっと焦げましたけどね。火加減は難しいです。面倒だからもうしません。

 米は、とにかく、値段だけで選ぶ。スーパーに、いろいろ積み上げてあるやつから
値段が一番安いのを探す。そしたら、いつもは¥1,680のが、今日は¥1,580って。
おおっ、これは即買いだ。(5kg袋)

 銘柄の違いとか、わからんですよ。しかし一度だけ、「くさいメシ」があって閉口しました。
1袋、全部消費するまで我慢しました。あれは何だったんでしょう。新しいのに、おかしかった。
農薬でも染みこんでいたんでしょうか。まあいいや、勢いで飲み込んでしまえば。(笑)


■APPLE DISKII I/Fカード 〜初級編1(両面基板)〜

 アップル社の創業者のひとりであるスティーブ・ウォズニアクが手がけた製品の中でも、
最高と言われているDISKII I/Fカードです。



 ↑但し、これはコンパチ基板です。回路は基本的に同じ。


 この基板の素晴らしさは、最小限の安い部品で、フロッピーディスクのインターフェースを
作り上げたことにあります。のちにMacintoshにも、IWMチップとして内蔵されました。

 しかしMacintoshの初期の頃は、独自フォーマットであるために、他社(MS−DOS、
Windows)とのディスク互換性がないのが欠点でした。Macintoshフォーマット、と
フロッピーに書いてあったのを覚えている方も多いでしょう。(MS-DOSフォーマット済み
よりも安かったから、Macintoshフォーマット済みを買って、MS-DOSフォーマットをし直して
使っていたっけな)

 確か、MS-DOSディスクの読み書きができるようにする機能拡張があって(昔のこと
なので忘れたが)、それを利用していたと思います。私が使っていたのはMacintoshIIvx
でした。


●DISKII I/Fカードは、APPLEII(アップルII)のオプションでした。アップルIIとは、
アップル社の初期のパソコンです。これが大ヒットして、成功し急成長しました。

 最初に、ちょっとアップルIIについて述べておきましょう。

 うちにあるのは、怪しいコンパチ基板(HOGE!というやつ)です。左の写真が、それです。
HOGE!と書いてある部分の拡大は、一番右の写真です。
  
 中の写真は、アップル社の純正フロッピーディスクドライブです。
でっかい!5インチで、かつ、厚いです。見にくいけど、3.5インチのFDDを上に置いてみました。

 アップルIIの回路図やROMのソースコードは、全てマニュアルに載っていました。そして
基板に使われている部品も、ごくありふれたTTLばかりでした。だから簡単にコンパチ基板を
作ることができたんですね。

 アメリカから輸入され国内で販売されていたアップルIIは、ものすごく高かったそうです。
だから、秋葉原などでコンパチ基板が流行ったのでしょう。

 昔の技術雑誌などの広告を見ると、「コンパチ基板 APII」とか、なんだかよくわからない
品物が載っています。それと並んで、「和文アップル テクニカル・ハードマニュアル」なども
載っていたから分かったでしょうね。

 技術情報をオープンにしていたので、いろんなメーカーがオプション品やソフトの開発で
参入しやすくなった反面、コピー商品を作られるもとにもなりました。

 のちに登場したIBM−PCに、そのオープンな思想が受け継がれていると思います。
拡張スロットによって拡張できるようにしたり、回路図などもオープンでしたからね。


●このコンパチ基板は、18年前に中古で入手したものです。

 CQ Ham Radioの売買コーナーを見て、買ったものです。メイン基板とFDD I/Fと
プリンタI/Fと、FDD、感熱プリンタ、電源、グリーンディスプレイ、キーボード、マニュアルを
一式で送ってもらいました。

 残念ながらFDDが壊れていて、結局まともに使えないままでした。上の写真の純正FDD
ではなくて、互換品のFDDだったのです。純正FDDは、じつは昨年、アメリカから輸入した
ものです。これが届くまで、何が故障していたのか(FDDなのかI/Fなのか)不明でした。

 長い間、使わずに押し入れに保管していたのを引っ張り出してきました。


●DISKII I/Fの謎にせまる

 アップルIIのメイン基板の回路図は、レッドブック(うちにあるのは和文のテクニカル・ハード
マニュアル)に載っていますが、DISKII I/Fの回路図は載っていません。
ネットで検索しても、見つかりませんでした。(じつは、解析が済んでから、再度探してみたら
海外のサイトを見つけてしまいました。探し方が悪かったのかな。そのサイトはココでした。
じつに詳しく、ハード・ソフト両面で書いてありました。回路図は、ココにあります。)

 うちにあるコンパチ基板は、純正DISKII I/Fと違ってICが多いです。純正は8個、コンパチ
は11個です。そのうち2個はROMで、ひとつはバイポーラROM、もうひとつはEPROMです。

 今回は、パターンの見通しをよくして追いやすくするために、部品を全てとりはずす事に
しました。半田吸い取り機で、ズゴー、ズゴゴー、という具合です。

 パターンのたどり方は、ICの1ピンから順番に調べていって、それを全てのICに対して
行い、クロスリファレンスのような照合を行って、接続関係を明らかにしました。また、
カードエッジ(金端子)から逆にたどることもしました。

 2台のディスクドライブが接続できるように、2つのコネクタが付いています(写真右側)。
このコネクタの信号は、ほとんど並列だと思いますが、ドライブセレクトのような信号が
あるのかどうか。

●回路図(の一部)

 最初に、基本となる資料を揃えてから、実際の回路図起こしにかかります。

 基本となる資料は、TTL−IC規格表、アップルIIのペリフェラル・コネクタ(拡張スロット)
の信号表、ROMのピン配置(2716と6309)です。

 今回は、IC1から順番にパターンをたどっていきました。

  

 全部で11ページになりました。(省略)

 実際に解析をしたのは、ずいぶん前のことでして、その最後のページには
「清書すること!」と自分で書いていました。しかし全然やっていません(笑)。

 純正I/FよりもTTLの数が多い、と書きましたけど、その理由が分かりました。
 純正は2つのROMがいずれもバイポーラです。チップセレクトの論理が、EPROMと
逆になっています。そのためにLS04が必要になっています。6ゲートのうち、なんと
1ゲートしか使っていません。(もしウォズニアクならこんな無駄ゲートは許さないかも
ね。)

●ROMの読み出し

 次は、2つのROMの内容を読み出します。

 ところが、手元にあるROMライタは、6309にも2716に対応していません。
そこで変換アダプタを作り、これで2764相当にしました。



 読むのは1回きりで、それをピンアサインの違う2つのROMに対して配線を
変更しなければなりませんから、ざっとしたものを手早く作りました。上の写真で
見えませんが、ユニバーサル基板の裏面にピンを出しています。
これを、ROMライタのソケットに差し込んで読み出しました。

 秋月電子などで売っているARIESのソケットは、300milでも600milでも装着
できるから、こういう時に便利です。(バイポーラROM6309は300mil)

 ROMライタのデバイス設定は、2764としました。特に深い理由はなくて、ただ
設定できる最低の容量ということです。

 実際に読み込んだデータは、当然、同じデータのカタマリの繰り返しとなります。
いわゆるイメージです。イメージデータという意味じゃなくて、ゴーストという言い方も
あると思います。2764(8Kバイト)として読み出したけど、物理的には、たとえば
256バイトです(キロバイトじゃなくて)。8ビット分しかアドレッシングできませんから
それを超えるアドレスは無視されて、結局、同じデータのカタマリの繰り返しになります。

 読み込んだデータを加工して、必要な部分だけ切り出せば良いのです。6309も
2716も容量が小さいから、手作業でもラクチンですね。


 6309は、74LS174と組み合わさって、マイクロシーケンサを構成しています。

 マイクロシーケンサとは、ROMの利用方法のひとつで、文章で書くとゴチャゴチャ
しますが、以下、説明します。

 データ出力をDラッチに入力し、Dラッチの出力をROMのアドレスにつないであります。
一部のROMのアドレスは、入力条件の信号であり、それらが変化すると、プログラムの
流れが変わっていきます。

 もし、単純なアップカウンタを構成するとしたら、たとえば、こんなふうにROMに
書き込んでおきます。

 アドレス  データ
  0      1
  1      2
  2      3
  3      4
  4      5
  5      6
  6      7
  7      8
  8      9
  9      0

 ラッチの出力は前回クロックが立ち上がったあとの状態であり、それがアドレスに
入力されています。

 ラッチは最初リセットされているものとして、
0ですから、アドレスは0で、そのときROMはデータとして1を出力しています。

 次のクロックの立ち上がりで1がラッチされます。
 ラッチの出力は1で、それがROMのアドレスになります。

 するとROMはデータ2を出力、次のクロックで2がラッチされ・・・という具合に動作し、
つまり、ROMはワン・インクリメンタ(+1)の役割を果たしています。

 ROMは、次のクロックが立ち上がったあとの状態が書いてあるというわけです。

 ある条件が変化したら・・・入力信号が変化したら、流れが変わるようにするには、
やはりそういうデータを並べていくだけです。

 たとえば256バイトのROMだとして、A7(アドレスビット7)が0か1かで、128バイトの
ブロック2つになりますよね。A7に何かの条件を入力してやって、それが0か1かで
それぞれの流れを、各々のブロックごとに並べていけば良いです。

 0番地からのデータは、さっきの通りとします。
 次に、128(16進数で80)番地からのデータを、さっきとは逆順にします。9、8、
7、6、・・・、1、0とします。すると、A7が0か1かで、アップ/ダウンの切り替えができる
カウンタになります。

 だいたい、基本的にはこういう考え方になります。

 これは現在のFPGAの内部にも利用されていて、たくさんのテーブルを持っています。
テーブル、つまりROMです。その組み合わせで計算や制御をしています。

●パワートランジスタの謎

 なぜかロジック回路には似合わない、パワートランジスタが1個だけ載っています。
これはなんだろうと、昔から疑問に思ってきました。少したどってみたら、バイポーラROMと
LS174の電源ピンに行っているようです。ICの電源を切ったりつないだりするのでしょうか?
そんな使い方は、見たことも聞いたこともありません。

 見たことも聞いたこともないけど、それをやってるんですね。ICの電源を入れたり切ったり。
ええーっ?それって大丈夫なのか?と驚きました。電源を切ったらシーケンサのリセットに
なるんでしょうね。

 ロジック回路の設計では、IC自体の電源を入り切りするのは邪道ですよ。TTLだから許さ
れるかな。CMOSだったら、入力にHレベルが入力されている時にVDDを切っても、入力の
ダイオードからIC内部のVDDに電圧がかかって動作することがあります。















(続く)


■MZ−1F07 FDD I/Fカード 〜初級編2(両面基板)〜

 なつかしの?シャープMZ−2000などに使用されていたフロッピーディスク
インターフェースボードです。MZ−1F07の付属品でした。



 下に重ねてあるのはユニバーサル基板です。つながっているわけでは
ありません。大きさを見るために重ねた時の写真です。

 楯岡孝道さんが改造方法をサイトに紹介されていたサンハヤトのユニバーサル
基板CPU−110Aです。今は入手できないMCC−157の代わりとして、助かり
ました。(有難うございました!)

 ン?なんだ前田、MSX用ユニバーサル基板を作ったくせに、MZ用は作らない
のかよとか言われそうだな。じつは図面を引きかけたところで、どう考えても
需要が少なすぎるので止めました。

●今回は、部品を取り外さずに回路を追ってみます。

 実際に解析をしたのは、もう、何年も前のことです。当時のメモを整理して、
ご紹介していきます。

 






(//)


■おまけ 「安全ブレーカの解剖」

 細かく書くような内容じゃないので、おまけということで・・・。休憩?も兼ねて。

 細かい回路を追うのは目と神経が疲れます。その点、こういった簡単なメカは
よい気分転換になるかもしれません。


 皆さん、肝心なときにブレーカが落ちて困ったことないですか?
 とくに、パソコンを使っている時なんか、そうでしょう。(UPS付きとか、ノートならいいけど)

 もちろん、安全のためにブレーカは落ちるわけです。大事なことです。

 でも、ああっ、肝心な時に落ちやがって、調子くるっちゃうじゃないか!!ということ、
ありますね。

 ← 安全ブレーカ

 広島の人は、ブレーカというより「テンパール」と呼ぶらしいですが、実際そうなので
しょうか?
 トヨタのハイエースなのに、ボンゴ(マツダ)と呼んでみたり。地元の企業に愛着や
親しみがある故に、そう呼ぶのかもしれません。

 (ご参考) テンパール工業

 かつての相棒は岡山出身で、長崎で一緒に住んでいても岡山弁まるだしでした。
広島も岡山も同様の方言と思います。個人的に驚いたのは、女の子も自称を「わし」と
呼ぶそうです。「わしなあ、〜〜〜なんじゃ」という具合に。

 現地の人にとっては普通で自然でしょうけど。たぶん「わたし」が詰まって「わし」に
なったのかな?と個人的には理解しました。確認はしていません。

 余談ついでに、「てー、てーてーてー」と、その相棒が面白がって紹介してくれました。
どういう意味かわかる?と聞かれたけどサッパリ分からない。聞いてみたら、「鯛を
炊いておいて」と、ばあちゃんが言っていたのだそうです。たいたいといて、が、「てー、
てーてーてー」に聞こえたとか。

 すごいね、てーてーてーてー、だけで通じるのか?(笑)

 加藤茶が、静岡で寿司食ったら鈴がなった、というのをスンズオカデススクッタラスンズガ
ナッダ、って言うのを小学生の頃の学習雑誌付録ソノシートか何かで聞いたのを、いまだに
覚えていますけどね。(その再生のためのプレーヤは工作の付録だった)

 まあ、どうでもいいんですけどね、そんな話は(笑)


 昼飯の時間になると、電気ポットや電子レンジがフル稼働するから、ブレーカが落ちるんで
すよね。以前の職場が最初の頃そんな具合で・・・あっ、また切れた。原因を取り除かないで
すぐにブレーカを上げるから、またすぐに落ちるんです。我々は電気でメシ食ってますから当然
わかるんですけど、事務員などは知らないから、そうしちゃうんです。それで何度も切れる。

 電源が切れた時、落ちたのはブレーカか、リミッタか、どちらであるかで対処方法は異なって
きます。エッ?ブレーカとリミッタって違うのか?

 通常、配電盤を見た時に、もっとも左側に付いている大きいスイッチが「リミッタ」です。これは
電力会社との契約アンペアで決まっています。全体の最大使用アンペア数を決めています。
もし契約アンペアを変更したら、リミッタの取り替えとなります。アンペアを上げるほうは、配線
自体を太いやつに交換する必要もあるかもしれません。

 これで契約アンペアが決まるなら、こいつが落ちないようにしてやれば・・・・・・という悪知恵が
働くかもしれませんが、犯罪になります。わずかな金額の差のために、それをやる価値も無いで
す。

 配電盤を見た時に、主に右側にたくさん並んでいるのはブレーカです。なんでたくさん付いて
いるかというと、「分岐回路」ごとに付いています。大ざっぱに言うと、エアコン1台ごとに1つです。
それから、部屋ごとに1つです。コンセントだけ別回路にすることもあります。法律が変わる前は
コンセントはいくつでも送り配線をしてよかったんですが、今は変わったようですね。その回路で
全体として使用アンペアが15Aをオーバーしなければ良かったと思います。実家の私の部屋など
1部屋に8カ所ぐらい、壁の中に配線を通して、たくさんコンセントを付けました。それも、各々3口の
やつです。しかもアース端子付き。

 現在の一般家庭は、単相3線といって、3本の線が引き込まれています。赤・白・黒の色分けで
真ん中の線は中性線といいます。赤相、黒相、と呼んでいます。赤と黒の間で負荷をとると
200Vになります。赤〜白または黒〜白の間で負荷をとると100Vになります。
エアコンなどで200Vを使うのがあるから、100Vと200Vが混在する一般家庭では、こういう
配線方式は都合が良いのでしょう。

 この、赤と黒の負荷バランスが均等になるように分岐回路を考えてやらなければなりません。

 リミッタが落ちるなら、契約アンペアを上げることになるでしょう。あるいは、リミッタは落ちないけど、
ある特定の分岐回路のブレーカがよく落ちるという場合・・・
仮に、台所の電子レンジと電気ポットだとします。この場合は分岐回路の設計の問題です。全体と
しては契約アンペアをオーバーしないけど、その回路だけ負荷がオーバーする傾向にある。

 台所の負荷は、主に電気ポットと電子レンジと冷蔵庫、事務所には無いけど家庭なら
電気炊飯器ですね。
 使用状態を考えてみると、常時通電しているのは冷蔵庫、それと電気ポットです。電気ポットは
湯の温度が下がると自動的に通電して、一定温度に保とうとします。一方、電子レンジは、
一時的にしか使いません。
 電子レンジは、弁当を「ぬくめる」(九州の方言?)時だけ、数分しか使わないので、ギリギリ、
ブレーカが落ちるまでには至らないかもしれませんね。

 このように、負荷の使用条件も考慮しつつ、あとは実験しながら配線替えをする、というのを
専業の電気工事屋さんと一緒に、複数の現場でやったことがありました。いつでもどんな時でも
バランスが絶対とれるわけじゃないけど、想定される使用状態において、ほぼバランスがとれる
ように、配線をつなぎかえました。赤と黒にクランプメータをかけて、あっちの電源入れて、こっちの
電源切って、電子レンジ動かして、・・・という具合に、3人ぐらいでバタバタ走り回りました。

 女性の事務員さんなんか、足もとが寒いといって、電気ストーブがそれぞれの人のところに
あるわけです。それで、根本をたどってみると、テーブルタップのタコ足で、しかも熱くなっていて
キケンな状態にありました。まあ、一般人はワカランわな。我々、専門家にとっては、ガクガク
ブルブルな状態です。
 プラグが中途半端に差し込まれてホコリがたまっていたりして、おそろしい事です。


 さっき、ブレーカが落ちないようにしたら、という話を書きましたけど、本当にそういうことができる
のか? いや、「手で押さえていたら落ちないものか」、という意味なんですけど。

 あまりに何度も落ちるから、つい、「ボンドで固めてしまえや!!」と
叫んでしまったこともあります。(電気屋としてはヤバイ発言ですな、ちょっとイライラしていた時でした)

 手で押さえるのは大変だから、ボンドで固めたり、つっかい棒で押さえておけば落ちないだろうか?
 答えを先に言うと、押さえていても落ちます(切れます)。そのあたりは、ちゃんと考えてあります。


 ブレーカの原理はご存じでしょうか?知っている人は飛ばしてもいいんですけど、ちょっと考えて
みるとよいでしょう。

 だいたい、こんなふうになっているんじゃないのか?と推測してみてください。

 できたら、現物を分解して中を見てください。通電しているものは危ないのでダメです。どこかで
使い古しで使わない物が手に入ったら、自分で分解して内部を確かめることをおすすめします。


 いくつかの方式がありますけど、いずれにも共通するのは、ある一定電流を超えると落ちる仕組み
になっているということです。(当たり前)

 熱や、電磁力を利用したものがあります。ここで紹介するものは、熱を利用しています。
ある温度以上に熱くなった、あるいは、電磁石の吸引力がある強さ以上になったら、作動します。

 いまは冬です。コタツを使っていますか。コタツは、最初に電源を入れるとパーッと明るく輝いて
急速に暖めようとします。しばらくたって、暖まると「カチッ」となって、暗くなります。またしばらくして
温度が下がると、またパーッと光ります。(真夏の暑い時にもカチッと鳴ることがありますよ!)

 サーモスタットという部品によって、温度を検知してスイッチを入れたり切ったりしています。

 サーモスタットの中には、バイメタルといって、温度によって「ひん曲がる」板が入っています。

 バイメタルとは、2種類の金属を貼り合わせたものです。バイ、とは2を意味します。メタルは言うまで
もない金属の意味です。それぞれは温度による収縮率が違うものだったと思います。(忘れた)

 伸び方が違うから、反り返ったような曲がり方をするわけですな。これを電気のスイッチの
接点に使えば、温度によって、くっついたり離れたりするから、温度制御ができるというわけです。
温度設定のツマミの「低・・・中・・・高」というのは、この接点との距離を調整しているのでしょう。

 ブレーカにもバイメタルが入っています。

 ブレーカのカバーをとってみます。

 ← いまOFFです。

 熱で遮断する仕組みは、手前側にあります。片方ですから、片切りです。

 1Pとか2Pといいますけど、これは1Pです。極数はP、素子数はEです。ブレーカを
選定するときに必要な知識です。

 太い銅線が接続されていて、少し斜めに立っている金属板がバイメタルです。

 (下の写真)この白いやつがロックしています。
こうやって浮かすと、操作ツマミが落ちてOFFになります。
いまは操作ツマミを手で押さえています。

 ←手で押さえていても切れる。

 ここで分かったことは、白いやつがロック解除状態になると、
いくら操作ツマミを押さえてON状態にしていても、接点が離れて
遮断されるということです。(すでに、手前・左側の接点は浮いています

 白いやつをロック解除するのは、バイメタルのしわざです。バイメタルが
うにゅ〜んと反り返って、白いやつを押すのです。

 細かく言うと、白いやつに付いているネジ(調整用)を押しています。

 ネジは、赤い接着剤で固定され、ゆるみ止めが施されています。
規定の動作条件で作動するように調整されているので、いじってはいけません。

 まとめると、操作ツマミは、ブレーカをON状態にロックする役割です。
手でOFFにすればOFFになりますけど、負荷がオーバーしてロックがはずれたら
いくらその時に手で押さえていても、内部的には接点が浮いた状態になります。

 従って、ボンドで固めたり、つっかい棒をひっかけておくのは無意味になります。

 ←バイメタル部分の拡大

 ちなみに、太い銅線はスポット溶接で接続されています。半田付けはダメです。
なぜなら、熱くなる部分には半田が使えません。それと電気抵抗が問題になります。

 電気の屋内配線には、半田付けは使いません。昔は「ねじり接続」や「とも巻き」などを
した時には半田を流していたようですが、現在では半田付けは無いといっても良いです。

 圧着接続が主流です。たとえばリングスリーブです。2〜4本の導線を一緒に圧着します。
ブレーカの端子も圧着端子を使います。電線をよじって、つっこんだのをネジで締めるのでは
ありません。電線の先端を剥いて、ブレーカ端子を圧着し、それをネジ止めします。
 差し込み式のコネクタも有りますけど、やはり半田付けではないです。


 ところで、熱くなるとしたら、バイメタルだけでしょうか?配線が焼けたりしないでしょうか?
ちょっと考えてみて下さい。

 答えを言うと、熱くなる部分は抵抗が他の部分より大きいです。わざとそうなるようにしてあ
ります。このバイメタル部分が熱くなります。ブレーカのケースは耐熱性の樹脂でできています
から、もちろん、溶けたりしません。

 さっきの配線接続の話とからめて説明すると、抵抗が他の部分より大きいと熱くなるのですから
接続部分が抵抗をもたないように接続することが大切です。それには、圧着が確実です。当然、
それに用いる工具は適切に調整され、誰がやっても同じ力で確実に圧着されるようにします。
(カチ、カチ、カチ、・・・と締まっていき、最後にロックがはずれるでしょう)


 次に、バイメタルが作動したところを見てみたいと思います。実際にコンセントに接続し、
出力をショートさせれば作動するでしょうが、それはちょっと怖すぎます。結果がわかるだけに
やれと言われてもやりたくありません。

 そこで、バイメタルをライターで加熱してみました。

 

 左の写真は、加熱する前の状態です。バイメタルは左側の金属板です。
 右の写真は、加熱後の状態です。バイメタルにススが付いているでしょう。

 ちょっと加熱したら、バチーン、と落ちましたよ!


 最後に、ついでという事で漏電ブレーカの説明をします。

 配電盤の真ん中あたりに付いていて、緑色のテストボタンが付いているのが
漏電ブレーカです。

 緑色のボタンを押すと、バチーンと落ちます。

 漏電ブレーカは、漏電を検知して、バチーンと落ちる仕掛けです。
 なぜ漏電が検知できるのでしょうか?

 そのために、漏電ブレーカにアース線をつなぐ必要があるでしょうか?
 実際、漏電ブレーカにアース線をつなぐ必要はありません。

 柱上変圧器から、家庭への引き込みをイメージしてもらいながら、考えてみます。

 電灯線は、考えやすいように2本線だとします。

 2本のうち1本は、電柱でアースに接続されています。これは安全のためです。

 そして、通常、このアースに電流は流れません。(対地電圧を決定する)

 2本の配線は、お互いに電流の方向が異なるだけです。負荷に入るほうと、
出るほうです。どこを計っても(どこに電流計を入れても)同じ電流値を示します。

 交流なので、ご存じのように、1秒間に50または60回プラスマイナスが変わりますが
考えやすいように、ある瞬間で考えます。

 もし、たとえば洗濯機が漏電したらどうでしょうか。風呂場のような湿気の多いところに
置いたりして、絶縁が悪くなり、漏電したとします。

 漏電の電流は、風呂の床を通って地面に流れ、電柱のアースに流れ込みます。そういう
回路ができます。

 その結果、帰りの道が2系統になります。

 すなわち、さっきの2本線の行きと帰りの電流値が同じになりません。
 これを利用して、漏電を検知します。

 電流を測定するには、電流計を使っても良いですが、変圧器を使うこともあります。
変圧器というより、電流センサという呼び方があります。ただのコイルですが、この中に
2本の配線を通します。

 通常なら、2本の配線に流れる行き帰りの電流値は同じですから、磁界は打ち消しあい
電流センサの出力は0となります。

 ところが、漏電があると行き帰りの電流値に差が生じますから、その差が電流センサの
出力にあらわれます。これを増幅し、電磁石を作動させて、ロックをはずし漏電ブレーカは
落ちるというわけです。

 子供の頃、よく漏電ブレーカが落ちるので調べてもらったら、どうやら漏電ブレーカ自体
の不良でした。その取り外したやつをもらって、分解したことがあります。

 回路基板は樹脂で固めたブロックになっており、不透明なので中を見ることはできません
でした。苦しまぎれに、金づちで叩き割って見たら、確かに電子部品と基板が入っていま
した。


 あと、単相3線式の中性線欠相について調べてみてください。中性線が浮いたらどうなる
か?

(2008/12/08新規)


■おまけ 「トラ技は厚かった」

 毎月、トラ技が届くたびに、薄くなったと思う。

 2009年3月号と、1987年1月号



 (左)厚さ比較 (右)定価比較
 

 ざっと、昔のやつは2倍以上の厚さがある。

 まるで、電話帳のようだ。

 電話帳といっても地区によっては薄いのもあるが、自分のイメージでは
分厚いものを指している。(電話帳自体も時代遅れになりつつあるが)

 そして、大ざっぱに半分は広告で、あとの半分は記事になっている。
 (厚さ比較の写真を参照、紙の色の違いに注意)

 昔は、広告だらけの雑誌だと思っていたぐらいだ。最初にトラ技をみたのは
高校生の頃で、広告を買わされるのはイヤだと思っていた。当時は、まだ
広告の価値がわかっていなかった。

 仕事をするようになってから、こんな部品どこで作ってる?どこに聞いたら
わかる?どこで売ってる?などと、商品やメーカーを探すときに、本当に
役に立ったのだ。

 かつて、技術情報と商品情報は、雑誌から得るのがほとんどだった。それが、
インターネットが普及してから大きく変わった。雑誌だけではなくなった。

 トラ技の資料請求(広告を見て、その広告についている番号をハガキに
記入して資料請求する。または電話・FAXで資料請求する)は、昔はよく利用
したものだが、ここ10年以上は利用したことがない。

 まずURLを入力するか、検索エンジンに会社名を入力し、アクセスする。
そして、サイト上で閲覧するか、PDFをダウンロードすることがほとんどだ。

 NEPとか、商品情報を媒体にした資料請求雑誌?は、数年前まで購読していたが
年々、薄くなっていったものだ。日刊工業新聞社だったか、資料請求のハガキが
ドッサリ届くのがあったが、しまいには、ほとんど使うことがなくなったと思う。


 トラ技は、かつてその半分以上を占める広告を取り去って、いわゆる「ダイエット」
するのが習慣だった。ところが、すでに「ダイエット」するまでもなく薄くなったので、
最近はダイエットをしないのである。(本当は、面倒くさくて放置している)

 うちには1987年頃か、確実に全号揃っているのは90年以降だが、膨大な量の
トラ技がある。

 これだけあると、奥から引っ張り出してくるのも大変である。他の本も山積みだから
探す気にもならないが、たまにひっぱり出して見れば、面白くなって、つい、
目的を忘れて読みふけってしまう。

 そうだ、全部をスキャナにかけて、PCに保存しておけば、必要な時にすぐ開ける
ではないか。・・・・・・と思ってはいるものの、なかなか手が回らなくてできない。
一応、オートシートフィーダのScanSnapがあるのだが、紙を重送したり、引き込ま
ない時があって、効率が悪い。消耗品はきちんと交換しているのだが、やはり、
紙の質によるところが大きいようだ。ルーズリーフの紙は確実に引き込むが、
一部のコピー用紙は、必ず重送(複数枚を重ねて引き込んで詰まる)してしまう。
同じ用紙をプリンタに使っても、詰まったり重送しやすいから、やはり紙質だと思う。

 ScanSnapの引き込みが悪い時は、手で叩いてやるとよい。しかし、置き場所の
関係で、いちいち立ち上がるのが面倒だから、「ピンク○ータ」(笑)で、手元から
リモコン操作して振動を与えている。念のため、ピンク○ータは新品なのだが、
ジャンクで入手した。こういう使い道もあるのだ。


 脱線したが、これからの時代、雑誌はどうあるべきかと、素人ながら考えている。
海外の真似をするのが良いとか悪いとかの話ではないのだが、海外はどうなっているか
紹介しよう。

 私は世界各国のエレクトロニクス雑誌を購読している。インドのも読んでいるのだが
共通しているのは、トラ技みたいな分厚い本ではなく、週刊誌のようなスタイルが一般的
である。

 ただ、全ページが基本的にカラー印刷であり、読みやすい雰囲気はある。広告も
そこそこある。

 そして驚いたのは、年間購読の契約をすれば、購読号はPDFでダウンロードできる。
トラ技のように年間購読をしていてもCD−ROM(DVD)は別に1万円だったか、金を
出して買わないといけないが、海外の雑誌の場合、いろいろあるけれど基本的に
年間購読をしていれば、本誌も送られてくるがPDFも自由にダウンロードできる。
(登録したIDとパスワードでログインする必要はあるが)

 というよりも、印刷した雑誌を送ってもらうより、PDFだけ購読するという契約もある
のだ。その方が送料もかからず安上がりだし、海外から送ってもらうのは時間がかかる
けれど、PDFなら即時にダウンロードできる。そして、PDFなら保管場所をとらないのだ。

 個人的には、海外から郵便が送られてくることが楽しみであるし、ノンビリ寝転がり
ながら読めるから雑誌が欲しい。そして保存と検索用にPDFがあることが便利なのだ。


(2009/02/10作成)





 


 




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